
TOさんのジャーニー
TOさんのプロフィール
患者との関係性 報告者本人
病気発症時のご年齢 60代
性別 男性
病名 WPW症候群
診療科 循環器内科
治療箇所/部位 心臓
- 1998年6月
- 初期症状
- 診察のきっかけ
- 2015年
1月~4月- 選択肢
- 方針決定
- 2015年4月
- 手術前の準備
- 手術中の出来事
- 手術の感想
- 手術後の経過
- 手術後の結果
- 2024年8月
- 伝えたいこと
- 感想
TOさんの体験談
病気の診断
初期症状が現れた時期:1998年6月頃、病気判明の時期:1998年8月
初期症状
最初の切掛け:欧州海外駐在開始前の健康診断(1998年6月頃)の結果、心電図で不整脈が検出されたこと。但し、自覚症状は、特になく(年一程度で夜中に動悸を感じることがあった程度)で、驚いたのが実態。不整脈の内でも、WPW7症候群(1000人に2-3人程度と言われる)という珍しいものだったが、自覚症状(動悸を感じる等)が無ければ、一年に一回の検診による観察で宜しいという医師の進言で、そのまま6年半の海外駐在を継続した。実際、特別問題はなかった(年齢は35-41歳)。因みに、駐在先でスポーツクラブに入る際に、心電図を取ったところ、クラブドクターがWPWを発見し、喜び勇んで連絡してきたこともある。その際、「自覚症状もなく、観察で良いので、スポーツクラブに入ること、運動自体は問題ないことお墨付き」と当該医師と交渉し、そのまま問題なく過ごした。
その後、南米(ブラジル)海外駐在を2010-12年(46-48歳)の3年半送った際に、渡航後に高血圧(90-140程度)を健康診断で指摘された(渡航前は特段問題無かった)。駐在先は、会食の頻度も多く、糖・塩・脂いずれも摂取量多かったが、ACE阻害剤8等で簡単に75‐125程度に落ち着いたこと、自身が薬剤師免許有り、WPWの知見もあり、ある程度様子が分かるということからも、あまり重大に考えていなかった。これが最初の問題で、この頃から面倒くさがらずに体重のコントロール、食生活(特に塩分を取り過ぎないよう)対応しておくべきだった、と現在は思う。
診察のきっかけ
(上記に関係あるので、③とした)3回目の海外(米国)駐在2014‐15年(50‐51歳)の渡航前には、やはりWPWがA医大系のクリニックにおける渡航前診断で指摘され、 A大学医学部付属病院にて精密検査を受け、WPWのC型と診断(2014年7月頃)。この時は、①②に比べ、少し自覚症状があったが、年に2-3回動悸を感じる程度で、相変わらずあまり現実を見ようとしなかった。高血圧も、相変わらずであったが、降圧薬を飲み続けるとやめられなくなるという誤った考えに支配され、飲んだり飲まなかったりという状態。WPW起因の不整脈よりも高血圧をメインに考えていた。また、WPWの典型的症状であるBlack out(頻脈の発作による、めまいやふらつき)が既に出ていたにも拘らず、胃に血液が逆流しているから、空腹時に突然食べたからだ、と誤った理由を挙げて自己の不安を宥めていた。始めてWPWが「発症している」と診察を受けた A大学医学部付属病院に、偶然、高校同級生がおり、循環器内科医だった。いざとなったら彼を頼ればよい、と気楽に考え、これまた不安を自分で消していたように思う。また、高血圧もそれほどひどくなく、特に日本での投薬を求めなかった。同級生を含める医師群からも渡航禁止や治療を行なえという話もなかった(これは、症状がないと小職自身が主張していたからともいえる)。ホルター心電図等9はとっていなかった。
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手術方針の検討
検討時期:2015年1月〜2015年4月
選択肢
持続的な高血圧が不整脈を誘発するということで、ACE阻害剤を中心に投薬、時々心電図を取るために、首から下げるホルターで計測もした。ある時、高速道路を使ってオフィスから帰宅する際に、Black out10しそうな感覚があったので、道の端に止めて休んだところ、意識消失で完全Black outした。5分後ぐらいに気づき、これは生死にかかわるとはっきり認識した。また、ほぼ同時に、インド人主治医から携帯電話に連絡あり、Blackoutしていないか問われた。Webを通じて病院に転送されたホルター心電図には、WPWの症状がはっきりと出ており、Black out している筈(心電図が止まっていないので生きてはいるだろうが)大丈夫か、という確認だった。このタイミングで、元々考えていたカテーテル手術を受ける決意をして、2015年4月1日を手術日とした(優先順位高くすぐに決まった経緯は後述)。実は、状況的には、投薬治療ではもうQOLは上がらず、①カテーテル手術 ②ICD(植込み型除細動器)または③ペースメーカ挿入等の選択肢を示され、医師側では、②③の症例が欲しかった様子だったが、例えば日本帰国後に米国に機器のメインテナンスに訪問することなどのわずらわしさと、①の成功確率は自身のWPWxPVTの場合かなり高い(恐らく99%以上)だと認識していた為、カテーテル手術を選択した。この辺のインフォームドコンセントはさすが米国で確りしていると思った。
方針決定
施術は、セントルイスの B大学医学部傘下のC病院 D医師 となった(当時の主治医のインド人女医の上司で学術論文に使おうと考えたらしい D医師 及び B大学医学部の循環器内科医(高校同級生)に、セカンドオピニオンを確かめたところ、「体力のあるうちにカテーテルに踏み切るのは、推奨できる」「投薬でQOLが上がらないのであれば、手術を選ぶのは」「ICD/アブレーション11の方が良いだろう(心電図からもそれほど難しくないと診断していたらしい)」とのアドバイスを受けた。手術を受ける旨を告げたところ、珍しい例(セントルイス在の東洋人、WPWxPVT)だということで、優先順位トップとなり、すぐに手術が決定したのは非常に幸運であった。
カテーテル手術
手術の時期:2015年4月〜1か月ほどで経過観察
手術前の準備
詳細は覚えていないが、通常の検査等を手術前日(3月31日)に入院し、前日(3/31)及び当日に行った。米国で手術を受けると家族が過剰に心配する可能性もあると考え、資産明細をExcelに纏めたものを長男に送っておいた。手術後、実はカテーテルを受けたことを告白したところ、家内は驚き、怒っていたが、無事に終わったので、結果良かった。
手術中の出来事
初めは、局所麻酔と聞いていたが、手首からと、両足の股の付け根から計5本カテーテルを入れて全身麻酔をした。研修医らしき若者が10人以上いたことを覚えている。テンからカウントダウンと言われたが、Sevenぐらいで意識を失った。尿ドレインとしてのバルーンカテーテルは、手術中に行ったらしく気づいたら装着されていた。手術時間は6時間ほどで、先ずは、PVTを治療して、心電図を確認して問題ないとなり、その後、WPWを施術した、と術後 D医師からベッドサイドで説明を受けた。まだ麻酔から覚めたばかりで些か朦朧としていたが、言っていることは分かった。また、心電図を確認したが全く問題なく、完治と聞いてうれしかったし、実際に胸部の不快感が全くなくなっていたので、もっと早く行えばよかったとさえ思った。バルーンカテーテル12を抜くときは、股間にものすごい違和感と熱さ、痛みを感じ、唸った、当時の記録で、点滴でヘパリンを流し続けていると書いているが、日本では一般的でないらしい。
手術の感想
世界的にも有名なスペシャリストの執刀を受けられたのは、極めて幸運。また、術後、目覚めた直後に、当該医師が手を握りながら、嬉しそうに手術が上手く行ったことを報告しに来たのが驚きだった。また、全く、動悸がなくなり、再発もないので、信用のおける医者の治療を受けられてよかったと痛感している。後で請求書が来てUSD76K(当時の為替で900万円以上)だったことに驚愕した。ERを含めると1100万円以上のコスト(全てBlue Crossの保険でカバーされたので自己負担はほぼゼロ)で、改めて国民皆保険制度と民間保険との違いを思い知った。
また、その後、やはり高校同級生の女性が不整脈を患っていることを知る。カテーテル手術を数回受けたが、改善せず、時々発作に見舞われ、酷いときは階段等で休まないといけない、とのこと。手術しても改善しないことから、これ以上手術は受けないと決断しているが薬剤投与では、QOLは上がらないままとのこと。自身の幸運に感謝する次第。
手術後の経過
手術が15年の4月1日(水)で3日(金)には退院、4日(土)にはDinerに朝食(パンケーキとグレープフルーツジュース)を食べに行っていることをFBに投稿している。二週間後の18日(土)には、既に傷口も完全にふさがり、キックボクシングのトレーニングを出来るほどで、医師も驚くほどの回復だった。その月末にはD医師に呼ばれ、経過を報告した後に論文に使われたと聞いている(が、論文自体は未確認)。
手術後の結果
その後、頻拍を含め、症状は全く出ていない。やや困るのが、健康診断などを受けた時に、「WPW/C型カテーテル手術後の心電図」を理解し、比較できる人がまずいないので、自分の主治医(高校同級生)以外の医師と話をしても通じないこと。例えば2019年4月後半、 E病院病院での健康診断時に、WPWでアブレーションを受けた旨、前以て告げたところ、ECG取得後、医師からは、WPWのb型の疑いあり、精密検査また治療しますか?と見当違いなことを言われて困惑した。当該医師に、WPWのアブレーションを受けた人の心電図を今まで何例ぐらい見たことあるのか確認したら、初めてだと平気で答えることに驚いた。間違いを指摘しても、メンツがあるのか、先輩医師も同じ意見だと、譲らなかったので、今後、 E病院の循環器は信用に足らないという認識をしているし、病院は、表面上の名前からの安心ではなく、優秀な専門医がいるかどうかで判断すべし、と思う。
現在は人間ドック時に初めから「脈拍正常、不整脈無し、QRS幅は広いが、手術直後の心電図(ECG)と比較しても変化なし、PRの短縮もないのでWPWではない」と友人の診断をそのまま伝え、それ以上話があれば、この医師(高校友人)と話してほしいと言って対処している。
高血圧は残っているので、複数の降圧薬を毎日一錠ずつ服用している。血圧は、75‐125程度を維持。余談だが、ACE2阻害剤は、コロナウイルス(SARS‐CoV‐2)の吸着する受容体タンパク質(ACE2受容体)を特異的に争うため、恐らくコロナに罹りにくいことは初期から予想された。その旨、主治医(同級生)に確認したら、お、よく気づいたな、多分そうだと思う、でも、安心して出歩きすぎないでね、とくぎを刺された。これは、ACE2を服用しているとACE2受容体が誘導されて寧ろかかりやすくなる、という論文もあるので、どちらが本当なのかは検証されていない(が、恐らく我々の見解の方が正しいと思う)。
伝えたいことと感想
伝えたいこと
- 情報収集とバイアスの排除: 生兵法は大怪我の基なので、自分の身体(健康状態)を客観的に判断する手段を持つべき。また、面倒くさがらずに、また過信せずに客観的にみる視点が重要。
- 良いアクセス: 但し、最初のアクセスは極めて重要なので、プロフェッショナルにアクセスできるように、自分の人脈をフル活用して、信用おける医師に辿り着くこと。但し、誰もが良いアクセスは望めず、かなり偶然が支配することを意識して、情報の得やすい場所を探す。
- 偶然の排除:似たような状況のひとが、集まるコミュニティに入ることが出来るかは重要。それゆえ、本プロジェクトがその一助となれば、個人情報提供の価値がある。
感想
- QOL重視: 薬を飲み続けるなどで、不安に苛まれるのが最もQOLが悪いと思うので、根治を目指すべき。そのためにはバイアスから自由になり、早めに行動すること。
- 地域・国家バイアスのかからない医療体制:医療機関の情報共有は、患者にとって悪いことは一つもないので、是非、マイナンバー等を活用して、情報共有システムと、セキュリティシステムを持ってほしい。実際、自身も、米国での検査、手術結果で手に入れたもの全てを、現在の主治医たる高校同級生に渡し、治療に役立ててもらっているので非常に安心感有る。情報の囲い込みは百害あって一利なし。
- リスクの認識とスピード重視: その際、最初の内ある程度のエラーや情報漏洩があるのは、仕方ないと思うので、(リスクを理解した上で)情報を共有しても良いと判断できる人を集めて先ずプロトタイプを作ること肝要。右へ倣え、の日本人気質で全員合意を目指すといつまでたってもプロトタイプが出来ない。
- 反対勢力の想定:その意味で、未だに、マイナンバーカードに拒否反応を示す群は大きな障害となり得る。二つに大別すると A)情報弱者か B)ポジショントークと思う。 A)は日本人に多い理由なしの何となくそう思うや、付和雷同型 B)の代表例が医師の一部で、医師のみが患者の情報を扱えるという既得権を手放したくない人たち、と思う。
- AIの活用: 実際に、症例をたくさん集めれば、治療方針の複数提示は、AIを用いた方がより確度が高いと想定。最終的な判断は患者自身がするという点さえ守れば、個人情報は保護できるし、是非、匿名性を担保した治療用ビッグデータの創設を目指すべき。
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Footnotes
- 【注釈】Wウォルフ・Pパーキンソン・Wホワイトと病気を見つけた人の名前がついている心臓の病気。脈が異常に早くなります。
- 【注釈】アンジオテンシン変換酵素阻害薬と呼ばれる高血圧の薬
- 【注釈】携帯用の心電図計で24時間心電図を記録できる装置。
- 【注釈】目の前が真っ暗になる発作で眼前暗黒感と呼ばれる症状
- 【注釈】心臓カテーテルアブレーション(経皮的心筋焼灼術)と呼ばれる治療法。心臓の一部を焼却してする不整脈を治療する。
- 【注釈】導尿用の管
- 【注釈】Wウォルフ・Pパーキンソン・Wホワイトと病気を見つけた人の名前がついている心臓の病気。脈が異常に早くなります。
- 【注釈】アンジオテンシン変換酵素阻害薬と呼ばれる高血圧の薬
- 【注釈】携帯用の心電図計で24時間心電図を記録できる装置。
- 【注釈】目の前が真っ暗になる発作で眼前暗黒感と呼ばれる症状
- 【注釈】心臓カテーテルアブレーション(経皮的心筋焼灼術)と呼ばれる治療法。心臓の一部を焼却してする不整脈を治療する。
- 【注釈】導尿用の管
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