
ゆきねえさんのジャーニー
ゆきねえさんのプロフィール
患者との関係性 娘
病気発症時のご年齢 70代
性別 女性
病名 すい臓がん
診療科 内科、消化器内科
治療箇所/部位 すい臓
初期症状 特になし
- 2014年1月
- 初期症状
- 診察のきっかけ
- 病気判明
- 2014年
1月〜2月- 選択肢
- 方針決定
- 2014年2月〜
2017年11月- 治療前の準備
- 治療中の出来事
- 治療後の経過
- 治療後の結果
- 感想
- 2年後の転移(胃の外、腹膜播種)セカンドオピニオン、転院、手術
- 2016年
6月~7月- 治療前の準備
- 治療中の出来事
- 治療の感想
- 治療後の経過
- 治療後の結果
- 抗がん剤治療継続、緩和ケア
ゆきねえさんの体験談
病気の診断
初期症状が現れた時期:特になし 病気判明の時期:2014年1月
初期症状
何もなし
診察のきっかけ
2つ年下の母の妹が2年前にすい臓がんで亡くなった。すい臓がんは血縁者に出る事が多いので検査した方が良いと、知人に勧められたことから。
病気判明
人間ドッグのエコー検査ですい臓がんの可能性大。 まさか、本当に自分の母がガンにかかっているなんて。すい臓がんはがんの王様とも言われているくらい回復が望めないガン。しかし、早くに見つかったことは良かった。仮にステージ1だとすると、希望がないわけではない。アドバイス通りに検査受けて良かったとともに、アドバイスしてくれた人に感謝する。
治療方針の検討
検討時期:2014年1月31日〜年2月初
選択肢
すい臓の真ん中よりもしっぽ側に、腫瘍がある。現段階で腫瘍が悪性かどうかはわからないが、可能性は大いにあるので手術で取っておいたほうが良い。悪性だった場合、大変な事になる。細胞だけを取りたいが,切る事で病巣が飛び散ると危険なので、半分切るのが安全。
- 十二指腸から管を入れて腫瘍までの距離と悪性かどうかを調べる.良性だった場合手術はなし。だが、管をいれたことにより細菌感染して発熱したら手術。
- 悪性だった場合、手術する。開腹か内視鏡化は、医師の判断に任せる。
この様な方法で進めるが、良性と判断するのは困難で手術の可能性が大。外科と日程を決めて日を空けてもらった上で下記の①腹腔鏡補助下膵体尾部切除術をする。
切除した側にインスリンを下げる作用があるので、糖尿病になる可能性大。自己管理が大事になる。
方針決定
手術を受けるか否か、はじめは考えたが、初期なので、した方が良いと判断。インターネットですい臓がんについて調べたが、基本的には医師の意見を信用した。担当医は、すい臓がんの権威のある、大学病院の専門医にも画像を見せ、見解をきいたところ、担当医とおなじでとのことでした。
治療のプロセス・結果① 腹腔鏡補助下膵体尾部切除術/抗がん剤治療
治療の時期:2014年2月〜2017年11月
治療前の準備
2月24日の手術に向けて2月19日入院
手術前検査:内視鏡的逆行性胆管、膵管造影術(ERCP)-腫瘍の位置などを調べる。十二指腸迄内視鏡を入れ、胆汁、膵液の出口を探しそこから細いチューブを入れ、造影剤を注入し胆管、胆のう,膵管の状態をⅩ線で撮影。咽頭の局所麻酔、静脈麻酔(補助的に麻薬)
治療中の出来事
腹腔鏡補助下膵体尾部切除術
おへそに切開を加え、そこから内視鏡を入れてからモニターで中の状態を見ながら6cmの開封部と2か所の穴から切除する。すい臓左3分の2、脾臓、リンパ節を切除 2月24日手術当日:朝から絶食。飲み物2本。12:00~17:00
17:00に酸素マスク、尿道カテーテル1つけてでてくる。辛そうだが、意識ある。お腹と喉の痛みあり。
治療後の経過
術後は、想像以上に辛く、身体、頭の痛み、吐き気、ふらつきあり。手術の翌日 昨日よりましになったが、トイレに立とうとするがしんどく歩けず車いすで行く。トイレで吐く。夕方から水分摂取1口ずつ開始。16:00に血糖値220にあがり、インシュリン注射(200超えると打つ)18:00 吐き気とフラフラ辛いので、背中の痛み止め局所麻酔薬中断。手術から2日後吐き気収まるが傷の痛みひどくなり辛い。背中の局所麻酔薬増やし、鎮痛薬飲む。→痛み和らぎ会話も普通にできるようになった。母は常に足腰を鍛えなければと思ってる人なので、早速歩く練習をした。しかし、20m程歩いたところで倒れこむ。顔面蒼白冷や汗目つきがおかしい。→起立性低血圧症とのこと。急に立ち上がったため。ベッドに横になり治まる。手術から3日後夜中痛みひどく、ほとんど眠れない。局所麻酔薬最大(3)にしたが、あまり効かない。手術から4日後朝の血液検査で異常なく、昼から5分がゆを食べる。夕食は腹痛あり3割食べる。口から麻酔を入れていたので喉が痛く咳がでるので傷口が痛む。血糖値は安定している。
治療後の結果
手術結果 手術は成功。しかし、手術前のエコー検査では、ごく初期のガンという見解だったが、実物検査の結果、ガンはじんわりと広がり、近くのリンパ節にも転移。(17ケ中3ケ)血液に乗って転移する可能性ある。ステージⅡ2となった。
今後の治療 再発を予防する為に、抗がん剤投与が一般的な治療。抗ガン薬Aが効く抗ガン薬B の予定。 娘の気持ちは、完治するわけではないのに辛い治療をやる意味あるのか疑問だったが、本人がやるしかない!と前向きだったことと、自然治療院の先生の判断も後押しし、体力が回復したら開始するとする(5月より)
術後の副作用 すい臓を3分の2とっているので、消化がうまくいかず3、下痢多発。味覚障害で、食べ物がおいしく感じられず、胸のむかつきあり、食事の量も激減で10kg痩せる。気分もすぐれない。
民間療法 4月に自然治療院にて整体。体のゆがみ調整したら、胸のむかつき治り、食欲改善し、めずらしく、夜ぐっすり眠れた。以後、食欲が少し戻る。蓮見ワクチン取り寄せ、近くの医院にて注射してもらう。~6月末まで
抗がん剤治療 抗ガン薬B 5/27~6/1まで5回投与したが、白血球数値下がり中止。TS-1に変え2015年4月まで。副作用下痢がひどくなり、脱毛、口内炎。
感想
2014~2015年 すい臓切除手術と抗がん剤投与 その後
手術とその後の副作用、そして、抗がん剤治療はとても辛く、生活は一転した。しかし、術後の痛みは数日でなんとか治まったし、術後の副作用も、下痢などと上手く付き合いながら徐々に今までの生活を少しずつ取り戻せてもいた。8月には親せきを自宅に集めた食事会ができたし、2014年秋ごろから、趣味の登山や旅行も、無理のない範囲で楽しめた。2016年に再発するまでの間に、諦めずに趣味を復活させて良かった。楽しい思い出もできた。母は健康オタクで、食事や運動にものすごく気を使っていたので、ガンにはならないと疑いもしていなかった。人生には必ず終わりがあり、長ければ良いというものでもない。普段からいつ終わるかわからない自分の命を大切に、また、この世を去る時に、後悔のないような生き方をしたいと思いました。
2年後の転移(胃の外、腹膜播種)セカンドオピニオン、転院、手術
時期:2016年3月
主治医より説明:
現状: 胃の外に3か所転移と腹膜播種(腹膜にがん細胞が広がっている状態)
今後: 腹水が貯まり、腸閉塞になると予想される。何もしないと余命半年
治療方法:
抗がん剤治療(抗ガン薬B 、抗ガン薬C)週一回点滴3回+1回休
奏効率3~4割 余命、効果あれば1年~2年。2年以上はない。1年位が平均
抗がん剤治療実行:
3/23、4/4,4/13 合計3回。
吐き気止めの薬2錠、吐き気止めの点滴30分、その後2時間点滴、その後も吐き気止め薬、服薬
副作用:
当日、下痢5回、3日目からしんどくなり、4日目、すごくしんどい、身体がいたい.腰から下が痛くて立っていられない。膝、くるぶし、腰、肩の痛み。喉の渇き、夜眠れない。熱はないけど熱っぽい。6日後にましになる。かなりひどい副作用。
転院の決意:
このように、抗がん剤治療が辛すぎる上に、効果がそんなに期待できるものではない、とのことなので、抗がん剤治療を続行するか否か悩んでいた。そこへ、私のいとこからの勧めで、いとこのガン友達2人が治療して、実績があった病院-A病院に相談、転院することに決める。ここは、全身の抗がん剤治療ではなくて、腹腔内に直接抗がん剤を入れる治療をしている。すい臓がんを治すことは困難だが、今後命取りになるであろう腹水や、腸閉塞になるのを避けたり遅らせたりすることはできる。そのための治療をすることで、命を伸ばすことができる。また、副作用が少ないとのことから。
A病院病院とは:
テーラーメードがん化学療法を行っている。国のがん標準治療にとらわれず、患者一人一人に合った化学療法を行う。とりわけ、腹膜播種患者に対し、全身抗がん剤治療を推奨している標準治療に対し、腹腔内に直接抗がん剤を注入する方法をとっている。日本のガン医療は、厚生労働省のがん対策基本法に基づき、全国民が標準的ガン治療を受けられるようになった。が、患者の症状ではなく、ガイドラインに記載されている、一律の治療を推奨し、効果がなければ緩和ケアを進められる。 A病院では、最後まで治療をあきらめず、効果的に延命できる処置を試みている。
旧病院とのやりとり:
転院することを伝えるのは正直罪悪感をかかえながらだった。遠方に住む娘の私は担当医で院長先生へ直接電話相談もしてもらえたのは、ありがたかったが、最後の診察での態度は冷たく感じたし、親身になってくれたとは思えなかったので、母ともどもあとあと嫌な感覚が残ってしまった。
治療のプロセス・結果② 腹膜播種治療を始める為に腹膜内のガンを切除。卵巣も切除。
治療の時期:2016年6月~7月
治療前の準備
5/13: A病院外来にて説明受けた内容:PET、CT検査にて大きなガンがお腹にないか調べて優先順位を決める。何も見つからなくてもお腹を開いて、画像に移らないガンがないかを見る。癒着等ない様にきれいにする。洗う。抗がん剤の入り口を作る。卵巣は転移しやすく、転移すると腹水が貯まって重くなる。卵巣を置いておくメリットがないのでお腹を開くなら、取る。42wkに一回お腹に抗がん剤投与。寝ていた方がお腹に留まるので1泊する。転院前の病院での全身の抗がん剤は、良い薬を使っても腹膜の中にはほんの少ししか届かず、全身にきつい薬が届いてしまう。腹膜への直接の抗がん剤の副作用は10人中1人。お腹を開くデメリットはほぼない。すい臓がんなので、その後良くなる可能性は低いのでやりましょうとは言えない。このまま何もしないと、お正月までいけるかわからない。腸は一度癒着したらはがせないから、つまって苦しくなって、どうしようもなくなるので、それを避ける為に手術する。
6/2 外来受診: 大学病院などの大きな病院では決められた標準治療以外はできないことになってる。A病院では服を仕立てるようにその人に合った治療をするテーラーメード治療。とにかく、腹水貯まったり、腸閉塞にならないように、直接抗がん剤をいれるのが大事です。
→治療法納得して、任せると決める。
手術日 6/23に決定。その前6/7にポート埋め込み手術する。6/8 第一回目抗がん剤治療。副作用は、聞いていたより辛く、ムカムカ、体痛いしびれ食欲不振。
治療中の出来事
手術中、卵巣周りに広がったがんを切除する際、すべて取り切ろうとして切除し血管を糸で縛った時に左の尿管が曲がってしまい、尿の流れがとまった。右の尿管は破れてしまった。医師はその事に気付かずお腹を閉じた。そのことは次の病院で開腹手術をして明白になるが、この時点ではまだ分かっていなかった。
治療の感想
術後、身体が想像以上に辛い。お腹がどんどん膨れていく。娘の私から「先生、お腹がどんどん膨らんでないですか?」と言って気付く。5
治療後の経過
次の日の朝、別の病院に搬送。尿毒症でこのままでは命は7日もつか。手術必要だが、かなり危険だし、できるかどうがわからない。それに、標準治療に以外の手術をしているから、そんなことする方が悪いと言われる。その後、新病院の主治医とA病院の医師と電話でやりとりするが、うまく話できず、話進まない。娘より、A病院の医師に、直接ここの病院に出向くよう依頼。一度断られるが、来てくれ、話がまとまる。A病院の医師と、話がまとまると、当病院の医師の態度が急に変わり、協力的になった。→「命は必ず助けますから!」 その日の夕方18時より、緊急手術20:30終了し、成功。両方の尿管にステント6挿入。バルーンも装着。母がよみがえる。赤くむくんでいた顔が手術室から出てきたら白くスッキリしていた。7
治療後の結果
感想: がんの標準治療と標準治療外について、どちらが正しいのか、患者にはよくわからない。しかし、どちらも明確にして、患者側が選べるようにできないかとも思う。標準治療外の方法はエビデンスがないとのことだが、実際有効である場合もあると聞いた。標準治療以外の治療に対して、他の医師からの態度が冷たすぎる。患者側からすると、なんとか状況に応じて最善を尽くしたいと思っているが、、その思いが日本の医療に反映されていないようにも感じ、どうすれば良かったのか、未だに答えは見つかっていない。
*A病院の医師の見解: 手術で合併症になってしまったことは申し訳なかった。しかし、手術は成功だった。卵巣の周りにすい臓からの転移が見られたし、卵巣自体も腫れていて、皮様8の状態で、更に卵巣は癒着していて、尿管側に引っ張られていた。、両方とも切除できたのは幸運だった。手術後の今、お腹の中がきれいなうちに抗がん剤治療をすれば、かなり効果が高い。今ならがんを抑えられる。 何もしないと腸閉塞、腹水,胆汁の所の閉塞になり、早期に厳しい状態となる。
母の気持ち:手術で大変な目にあった。ステントが体内に入っていて不快だし、しんどい。今すぐ抗がん剤治療するエネルギーがないが、早くやらなくてはという気持ちもある。少し考える。
抗がん剤治療継続、緩和ケア
2016年8月~2017年11月
バルーン、左右ステント抜去: 6月の緊急手術で挿入したバルーンは8月、尿管ステントは8月に左側、9月に右側の抜去ができた。ずっと不快だったので、ほっとした。抜去の際は痛みも強めで辛かったが、抜去処置前に、下半身何も履いていない状態で毛布もなく15分位放置されたのは辛かった。ただでさえ、辛い事だらけなので、こういう時に丁寧な対応をしてくれると、心が落ち着くのだが、残念だった。
抗がん剤治療再開: 2016年8月~2017年9月 A病院で手術後、月2回のペースで約1年間に計28回。 (最初から合わせると、40回。副作用がひどかった中、ほんとによく頑張った。)
抗がん剤治療の感想: お腹に直接入れるから、副作用はほぼないと、聞いていたが、実際はとても辛った。
訪問医療と訪問看護: 皆さん親切でとても助かりました。母のお気に入りの看護師さんが来てくれた時は、元気になっていた。2017年5月、夜にお腹の激痛があり、訪問看護に連絡したが、医師はきてくれなかった。そのことから、どうしても体がつらい時になんとかしてくれる医師の必要性感じ、緩和ケア―専門の訪問医療にきてもらうことにした。
緩和ケア: A病院にて、7月オキシコンチン9痛みはなくなったが、吐き気ひどく、どっちも辛い。9月、訪問看護師さんが、痛み止め麻薬の説明をしてくれる。詳しい人が来てくれるととても安心できる。鎮痛薬の併用で、効いた。
娘の所に引っ越し: 今まで母は大阪で一人で頑張っていた。娘は月に1回、1週間ほど滞在して付き添う。しかし、もうこれ以上、一人で生活は無理。抗がん剤治療も耐え切れないので終了とする。2017年10月、娘のいる茨城県に、最後の力を振り絞って引っ越し。
茨城で緩和ケア: 看護師さんは親切でよかった。しかし、緩和ケアの麻薬を使用後、立てなくなる。効き目が強すぎたとのことで、服用中止。替わりに複数の鎮痛薬を、服用。少し効いてるみたいだった。
緩和ケア感想: 最後は緩和ケア頼みとなる。緩和ケアの訪問医療はとても重要。 緩和ケアの訪問看護を週1回でお願いしていたので、週3回位でお願いしていればよかった。もしくは、電話相談などあれば良かった。なぜなら、、服用後の様子など、細かく観察して量の調節などができたと思う。
全体の感想: 母の病気に対して、少しでも余命を伸ばしながら苦しみをやわらげるという事に重点をおいていました。腹膜播種後の手術と抗がん剤治療で、少しは延命できたと思う。しかし、抗がん剤治療は想像以上に辛いものでした。ただ、母がやるしかない、と決断していたので、我慢強く頑張れた。辛かったので、これがベストなのかは、やっぱりわからない。
- 【注釈】尿道口(尿の出口)から入れて、先を膀胱の中までをつなぐ管。尿が膀胱に貯まらずに出てくる。手術の時のように、患者さんの意識がない状態では必ず適用する手技。 ↩︎
- 【注釈】手術の結果、ステージは1ではなく2であると診断された。 ↩︎
- 【注釈】膵臓から出る消化液には、糖質に対してはアミラーゼ、たんぱく質に対してはトリプシン、脂質に対してはリパーゼがあります。リパーゼが不足することで脂質の消化が出来ず、脂肪分が大量に大腸にまで到達するので下痢になります。 ↩︎
- 【注釈】卵巣に転移していることが分かれば、卵巣は両方とも取ります。
(注)転移している場合には、年齢と関係なく取らねばなりません。 ↩︎ - 【注釈】直ちに、転院することが決定した。 ↩︎
- 【注釈】傷付けた尿管の中に管を通して、尿が腎臓から膀胱にスムーズに流れるように工夫したステントと呼ばれる管 ↩︎
- 【注釈】転院先の病院で行われた手術により、先の手術での不手際が明らかにされた。すなわち、手術中、卵巣周りに広がったがんを切除する際、すべて取り切ろうとして切除し血管を糸で縛った時に左の尿管が曲がってしまい、尿の流れがとまった。右の尿管は破れてしまった。医師はその事に気付かずお腹を閉じた。 ↩︎
- 【注釈】卵巣皮様のう腫と呼ばれる、特殊な卵巣の腫瘍 ↩︎
- 【注釈】痛め止め(麻薬) ↩︎
コメント