強皮症の体験談【りんごさん】

【BC030】
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りんごさんのジャーニー

りんごさんのプロフィール
患者との関係性   本人
病気発症時のご年齢 40代
性別        女性1
居住地区      北海道

病名        強皮症2
診療科       膠原病内科
治療箇所/部位   手の指3
初期症状      指にレイノー症という指が冷たくなる症状がでました。

りんごさんのジャーニー

りんごさんの体験談

病気の診断

初期症状が現れた時期:2017年12月 病気判明の時期:2017年12月

初期症状

2002年から全身性エリテマトーデス4の治療を行っていましたが、その期間に子どもを二人産み、子育てをしていました。子育てをしているときは症状が安定しており、入院することもなく仕事もしていました。 

安定した生活が続いていましたが、2017年12月に指にレイノー症5という指が冷たくなる症状がでました。 

診察のきっかけ

レイノー症の場合、白くなって、紫色に変わり、その後赤くなって治るというのが大体の流れなのですが、この時は指が紫色の状態から戻りませんでした。段々と痛みが増していき、夜は動いていないと悶絶する痛みがあり、痛み止めも全く効きませんでした。その状態が1カ月ほど続きましたが、いよいよダメだってことで病院に行きました。 

検査

症状を見てすぐに入院と言われたが、当時子どもがまだ小学生だったため入院をためらってしまいました。外来でなんとかできないかと医師に相談したところ、血流をよくする薬と痛み止めを貰い外来での経過観察となりました。 
ただ、全く効果がなく、手がどんどんと腐っていきました(黒くなって炭化6していて、凍死しているような感じでした)。 
その状態を見かねた医師により強制入院となりました。また、私も1カ月間まともに眠れていなかったので、精神的にもおかしくなっていたのだと思います。入院後は脳に作用する強い痛み止めを飲み、そこでやっと眠れるようになりました。痛みから解放され、眠れることがこんなにも幸せなのかと思いました。 

病気判明

入院時に確定診断がつきました。壊死している段階で、医師もあたりはついていたかもしれませんが、入院後の検査ではじめて診断がつきました。確定診断の瞬間は痛すぎて、指を切ってしまいたいと思っていました。 

治療方針の検討

検討時期:2018年1月

選択肢

私が指を切断したいと担当医に言ったところ、一回形成外科にかかるように言われ別の医師に相談しました。そこで医師から「指を切らなくてもよい方法がある」と言われ、外来なのに2~3人の医師が集まってきて「指は絶対に切らない方が良い、第一関節はあった方がよい」と説得されました。 

高気圧酸素療法以外だと、強皮症は沖縄など暖かいところに行かないとよくならない、冬の間だけ沖縄に行く人もいると教えてもらいましたが、私にとっては現実的な選択肢ではありませんでした。 

方針決定

形成外科の医師の勧めや、「絶対に指を切らない方がいい」という説得により高気圧酸素療法を受けることにしました。 

治療のプロセス・結果 高気圧酸素療法

治療の時期:2018年1月~3月

治療前の準備

指を切断する代わりに高気圧酸素療法7を勧められました。スポーツ選手などが行っており、骨折の治療期間が短縮された事例もあると説明を受けました。血流による病気にも効くと言われているので、まずこの治療方法を推奨されました。 

体に圧をかけて、その中で高濃度の酸素を吸入する治療方法で、圧縮された体の中に高濃度の酸素が隅々まで行き渡り血流が改善することにより、新生血管ができてきて壊死した指もよくなると説明されました。 

治療中の出来事

造影剤検査をすると、太い血管が半分程度しかありませんでした。1カ月半ほど治療をしたところ、細い血管が指先まで伸びており8、壊死した部分にも爪が生えてきて症状がよくなりました。 

治療等の感想

高気圧酸素療法は受けてよかったと思いました。もし、血流障害が原因の一つの病気になった際には医師と相談して受けてほしいと思います。私がこの治療を受けていたときは1回あたりの治療費が安く、温泉に行くような費用で治療を受けることができました。年々治療費が上がっているので、治療効果が認められているということなのだと思います。 

治療等の経過

治療後、指の壊死は治りましたが2年ほど潰瘍は残り続けており、ずっと包帯を巻いた状態でした。そのため、水仕事など色々な作業ができなかったことは大変でした。 

手の形も変形してしまった9ので、見た目の変化は周りの目をすごく気にしていました。また、今でこそキャッシュレスが普及していますが、当時はまだ現金でのやり取りが多く、小銭が上手く受け取れず大変でした。 

感想と伝えたいこと

感想

子どもができないかもしれないという諦めもあったので、何もいらないので健康になりたいと思っていました。その後強皮症も発症し、辛いことも経ての自分だと思うようになりました。その病気のせいにして「何ができない」という考え方はしたくない、やりたいことはやっていける、自分の中でチャレンジできることは何かを考えるようになりました。病気だからチャレンジしていく、そういう想いが芽生え、病気になったからこそ好きなものを見つけることができ、病気だからこそ頑張れたのかもしれません。 

伝えたいこと

無理をせず、一人で悩まずに誰かと病気について話せる環境を作ってほしいです。病気について話すことが恥ずかしい、情けない、という気持ちもあるかもしれませんが、誰かと話すことで自分の気持ちを整理できたり、新しい気持ちに気付くこともあります。患者会への参加の機会を持てると、助けになることもあります。共に歩む仲間もいることを忘れずにいて欲しいなと思います。 



  1. 【注釈】女性に多く見られます。 ↩︎
  2. 【注釈】強皮症とは皮膚が硬くなる病気なのですが、皮膚のみに症状が現れる限局性強皮症と皮膚に加えて内臓も固くなる全身性強皮症の2種類があります。両者はまったく異なる病気なので区別しなければなりません。この方は限局性です。限局性強皮症の患者さんが、診断名を単に強皮症とだけいわれ、全身性強皮症と思い込んで悲観することがあります。医師も患者も注意が必要です。 ↩︎
  3. 【注釈】強皮症の最もよく知られている症状は、手足の指さきの潰瘍であり、典型的な初期症状でもあります。 ↩︎
  4. 【注釈】全身の様々な場所、臓器に、多彩な症状を引き起こす病気です。 ↩︎
  5. 【注釈】寒冷や緊張などにより指先の色が白くなる現象です。血管が発作的に収縮したので血液が指先に行かない状態です。典型的なケースでは、指先の色がまず白くなり、白色の後に紫色に変わり、赤色となったのち元に戻ります。 ↩︎
  6. 【注釈】指先の炭化とは、壊疽のことです。壊疽は皮膚や皮下組織が死滅すると、黒色や暗褐色に変色します。壊死の状態です。壊死は、糖尿病などの病気や外傷によって血流が悪くなり、組織が酸素不足に陥ることで発生します。壊疽が進行すると、感染症のリスクが高まりますから、最悪の場合切断することになります。 ↩︎
  7. 【注釈】タンクの中に患者を収容し、タンク内の空気の酸素分圧を上げた後、2気圧にして、高濃度の酸素を吸入させる。通常は10分 – 15分程度をかけて装置内の気圧を高め、その後に60分程度安定した高気圧環境下に患者をおいた後、昇圧と同等またはやや長い時間をかけて減圧する治療法。 ↩︎
  8. 【注釈】危ないところであったと推測できます。酸素療法のタイミングが遅れていたら、指先の切断も治療の選択肢に入ってしまうところでした。 ↩︎
  9. 【注釈】関節が曲がって動きづらくなります。 ↩︎

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