重症筋無力症の体験談【yossyさんの体験談】

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  • 体験談は医師によるチェックを行っており、明らかな間違いや誤解を招くような表現はないようにしていますが、なるべく発信者の生の声をお届けするために訂正は最小限にとどめています。

yossyさんのジャーニー

yossyさんのプロフィール
患者との関係性   本人
病気発症時のご年齢 40代
性別        男性1
居住地区      愛媛県

病名        重症筋無力症2
診療科       神経内科

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yossyさんの体験談

病気の診断

初期症状が現れた時期:2005年8月  病気判明の時期:2005年11月

初期症状

20代のころから毎週末にテニスをしていたのですが、相手が打った球がなんか見にくい3というのが、一番最初に感じた自覚症状でした。目薬を入れたりしていましたが、なんら改善せず、そのうちに物が二重に見えてきました。4

診察のきっかけ

道路のセンターラインが二重に見えて運転もできなくなり、仕事でパソコンの文字が見えにくくなったことです。

検査

目の病気だと思い込んでいたので、最初眼科に行き、斜視と診断されました。プリズム眼鏡である程度補正できるといわれましたが、何もしなかったと思います。その後、会社の先輩の助言で地元の脳神経内科を受診しました。CTとかMRIでも異常は見つかりませんでした。産業医と面談した時に、A病院の神経内科を紹介してもらい受診することにしました。

病気判明

A病院を受診し、テンシロンテスト5を受け、重症筋無力症(以下MG6という)と診断されました。

クスリを注射することで一時的でしたが、複視がすっきり改善したことと病名が確定したことがとても嬉しかったことを覚えています。ただ、家に帰ってネットで病気のことを調べてみると、完治しない難病であることを知って気分的に落ち込みました。今後のこと、妻や子供のことなど不安だらけでしたが、何としても治して元気になりたいという気持ちを持つようになりました。

ただし、今回診断してくれた医者は非常に感じが悪く、インフォームドコンセント7ができないと思い、違う病院で治療することにしました。

治療方針の検討

検討時期:2005年11月

選択肢

2005年10月B病院の神経内科を受診し、11月13日に入院することができました。

胸部CTで胸腺腫8が確認できたため、胸腺を全摘出する手術を提示されました。また、手術までにステロイドを服用して症状を改善させることを外科の医者に勧められました。

方針決定

胸腺全摘出術については他に選択視がなくそのまま受け入れましたが、ステロイドの服用については神経内科の担当医師と相談しやめることにしました。理由は症状が目だけで軽症であることと、ステロイドの副作用を私が心配したためです。(結果的に手術後クリーゼ9を起こしたことから、手術前にステロイドで症状を抑えるべきであったと思った)

治療のプロセス・結果①:服薬治療(コリンエステラーゼ阻害薬)

治療の時期:2005年11月~2006年1月

治療前の準備

【コリンエステラーゼ阻害薬】2005年11月~2006年5月

対症療法薬として入院時から服用しました。手術後、特に飲み込みが悪くなった10時には食事の前に錠剤を潰してヨーグルトに混ぜてなめるようにして何とか胃袋にいれました。そうすることで飲み込み力が回復して食事を取ることができました。

治療のプロセス・結果②:胸腺全摘出

治療の時期:2005年12月

治療前の準備

手術に向けての準備は特にありませんでした。胸腺を提出すれば症状はすぐに回復すると信じていたため、手術する日が待ち遠しく感じていました。しかし、手術の後、人工呼吸器を外した後にクリーゼを起こし、再び人工呼吸器を装着するなど、状況は最悪でした。その後人工呼吸器は外すことができましたが、複視は改善されませんでした。

治療のプロセス・結果③:投薬治療(ステロイドパルス11・ステロイド投薬)

治療の時期:2006年1月

治療前の準備

【ステロイドパルス】2006年1月~

主治医からステロイドパルスで早期に症状を改善することを勧めら、何回か実施しましたがすぐには症状の改善はありませんでした。

【プレドニン(ステロイド)】2006年1月~

30mg/日を服用開始しました。

治療のプロセス・結果④:服薬治療(タクロリムス)

治療の時期:2006年2月~現在

治療前の準備

複視が残っていましたが2006年1月19日に退院しましたが、自宅で嚥下障害が発生し、食べ物が飲み込みにくくなりました。12このため2006年2月6日に2回目の入院となりました。

プレドニン(ステロイド)の効果が見られないことから、主治医の勧めにより免疫抑制剤のタクロリムスを服用にすることになった。その後二ヵ月ほど経ってから徐々に症状が回復し、2006年3月17日に退院することができました。プレドニンは徐々に減量し、タクロリムスだけの服用になりました。(現在も服用中)13

治療中の出来事

最初に複視の症状が現れましたが、眼科、脳神経外科でも原因がわからない時が一番不安でした。会社でも中間管理職として一番忙しい時期でしたが、複視では仕事もやりづらく、落ち込む毎日が続きました。

治療等の感想

クリーゼになったことが一番辛かったです。呼吸がしにくい、息苦しいという体験をしました。意識のある時に人工呼吸器を挿入するのは苦しかったけど、その後は楽になりました。体調がよくなり、口の周りのひげを看護師さんに剃ってもらうとき、まどろこしいので自分で剃っていたところ、医者から人工呼吸器をつけている患者が自分でひげを剃っているのを初めて見たと笑われたのを覚えています。人工呼吸器をつけたことが原因かどうかわかりませんが、外した後、一ヶ月くらい声が出なくなり、とても不自由な生活をしました。

治療等の経過

胸腺全摘出、ステロイド、タクロリムスの投与によって、体調は徐々に良くなり、複視は残ったまま退院することになった。退院後、複視も徐々になくなり半年ぶりに職場復帰することができた。19年経過した現在もタクロリムスだけは飲んでいるが体調は良好である。気になっているのはタクロリムスを飲み続けていることの副作用14が今後出ないかどうかということである。

感想と伝えたいこと

感想

MGという永久に完治しない難病であるということがわかった時、ネットでいろいろな情報を集めました。その中で患者会の存在を知り、地元愛媛にも支部があることがわかりました。ネットの情報だけでは得られない、患者の生の声を聴きたいと強く思いました。支部長さんと連絡を取り、会に参加させて頂きました。私の症状や苦しみを全部わかってくれる先輩の会員さんの存在が大きな力となりました。また、会が主催する医療講演会に参加させて頂き、その先生治療をお願いすることができたことが幸いでした。

伝えたいこと

この病気は人によって病状や治療の結果が異なります。私のように寛解状態になる人もいれば入退院を繰り返している人もいます。ネットで情報が氾濫している現在ですが、患者の声を直接聞くことが治療をしていく上で大きな力になると思います。是非患者会に入って欲しいと思います。また、新しい治療薬15が次々に開発されています。希望をもって16治療にあたって欲しいと思います。

関連する体験談

  1. 【注釈】男女比は1:1.15で女性にやや多く、2/3の患者は60歳以降に発症しています。 ↩︎
  2. 【注釈】筋肉は脳からの「動くぞ」という命令を神経から受けて動きます。その命令を神経から筋肉に引き継ぐコンセントの部分に故障があると、命令が届きませんので筋肉は動けません。コンセントの不都合が軽い時には軽症ですが、不都合が大々的であると筋肉はほとんど動けませんから、それが呼吸器に来ると呼吸困難になり一大事です。重症筋無力症は、このコンセントの筋肉側に問題がある病気です。 ↩︎
  3. 【注釈】斜視があったかどうかわかりませんが、眼瞼下垂は間違いないようですね。 ↩︎
  4. 【注釈】斜視があったかどうかわかりませんが、眼瞼下垂は間違いないようですね。 ↩︎
  5. 【注釈】コリンエステラーゼ阻害薬のテンシロンは元は商品名ですが、現在では検査名になっています。本検査では、テンシロンを静脈注射すると、それまで寝た位置では頭を持ち上げられなかった患者が、短時間ですが、筋肉に力が入って頭を持ち上げられるようになるのです。 ↩︎
  6. 【注釈】myasthenia gravis ↩︎
  7. 【注釈】一般的に言えることですが、インフォームドコンセントは難しいものです。微に入り際にわたって説明すると、患者は不安になる場合が少なくありません。ですが、ファジーに話しては、後から、聞いていませんでしたと、訴えられかねないので、治療する側はどうしても慎重になります。主治医の方も緊張していたのかもしれません。 ↩︎
  8. 【注釈】重症筋無力症患者の15~20%が胸腺腫を合併し、逆に胸腺腫患者の25%が重症筋無力症を合併することが知られています。そこで、重症筋無力症の患者には胸腺の摘出手術が治療の一つと見なされています。また、手術までにステロイドを服用するのは標準的な治療法のひとつです。 ↩︎
  9. 【注釈】重症筋無力症で呼吸筋(呼吸を行う筋肉:すなわち、横隔膜、内肋間筋、外肋間筋、胸鎖乳突筋他) の力が弱ると呼吸困難が生じます。その状態が急速に増悪し、呼吸不全に陥って人工呼吸器管理が必要となった状態です。全症例の11~15%で生じます。 ↩︎
  10. 【注釈】嚥下障害(食べ物が嚙めない、のみ込みにくい)は初期症状の一つとして知られています。 ↩︎
  11. 【注釈】ステロイドパルス療法は大量のステロイド薬(メチルプレドニゾロン500~1000mg)を1回2~3時間で3日間、点滴する方法です。 ↩︎
  12. 【注釈】生涯、目の症状だけの人が全体の約20%ですが、病状が全身に及ぶと、疲れやすい、手の筋力低下(シャンプーの途中で手が上がらなくなる)、足の筋力低下(少し歩くと疲れる)、発語障害(上手くしゃべれない)、嚥下障害(食べ物が嚙めない、のみ込みにくい)などの症状が出ます。なお、症状は1日の中で波があり、朝は症状が軽く、夕方になると強くなることが多いものです。また、休憩すると症状が軽くなることは良く知られた特徴です。  ↩︎
  13. 【解説】標準的な治療法。[1]対症療法、[2]免疫療法、[3]外科手術があります。
    [1]対症療法:神経から筋肉への信号伝達を増強するコリンエステラーゼ阻害薬と呼ばれる薬が使われます。筋肉が健康であれば、脳の命令が届きさえすれば動ける訳です。ですが、これは一時的な対症療法です。
    [2]免疫療法:治療の基本です。副腎皮質ステロイド、免疫抑制薬が使われます。
    そのほかには、抗体を取り除く血漿浄化療法、大量の抗体を静脈内投与する免疫グロブリン静注療法、補体C5と呼ばれる物質を特異的に阻害するモノクローナル抗体製剤があります。
    [3]手術:重症筋無力症患者の約15~20%で胸腺腫が合併しています。その場合には、外科的にこれを取り除きます。胸腺腫は早期に発見されれば一括して切除できる生命予後の良い腫瘍です。 ↩︎
  14. 【注釈】薬には、好ましい作用があると同時に、副作用は必ずあります。ただ、その程度が抗癌剤ですと強いですが、ビタミン剤では弱いのです。主治医が、折に触れて診察の際に血液検査などをしているのは、副作用が出ることも念頭に置いているからです。 ↩︎
  15. 【注釈】新薬。ウィフガート(2022年5月から発売された、全身型重症筋無力症と慢性特発性血小板減少性紫斑病の治療薬)。ヒフデュラ(2024年1月から発売された、全身型重症筋無力症の治療薬) ↩︎
  16. 【注釈】約50%の人は日常生活に支障がないようになります。全体の20%近い人で寛解します。 ↩︎

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