強直性脊椎炎の体験談【Kuniさん】

  • 当サイトは、個人の貴重な経験を発信・共有することを目的としています。最新の医学情報・治療方法などの情報を提供するものではありません。病状や経過、治療への向き合い方などはそれぞれ異なりますので、必ずご自身の主治医と相談してください。
  • 体験談は医師によるチェックを行っており、明らかな間違いや誤解を招くような表現はないようにしていますが、なるべく発信者の生の声をお届けするために訂正は最小限にとどめています。

Kuniさんのジャーニー

Kuniさんのプロフィール
患者との関係性   本人
病気発症時のご年齢 44歳頃
性別        男性
居住地区      福島県

病名        強直性脊椎炎
診療科       整形外科
治療箇所/部位   頚椎、腰

Kuniさんのジャーニー

Kuniさんの体験談

病気の診断

初期症状が現れた時期:2019年3月  病気判明の時期:2020年8月

初期症状

20数年前より皮膚病の尋常性乾癬、その乾癬が原因となって関節に炎症をおよぼす乾癬性関節炎を患っており、皮膚科でステロイド治療、整形外科で湿布・痛み止めの治療を行っていました。
その後は首にも違和感が生じ、動かしづらさを感じるようになりました。

診察のきっかけ

首に違和感を覚えたのは仕事中でした。机に置いた資料を見ようと下を向いたところ、首の骨がコキッと小さく音が鳴りました。初めは特に気に留めることなく過ごしていました。

検査

医師の診断は、もともとの持病である乾癬性関節炎からくる首の痛みだろうとのことで、リハビリテーション(理学療法、以降リハビリと表記)をやりましょうとの指示を受けました。

病気判明

意外なことに、それほど驚くことはありませんでした。普通なら、自分が指定難病であると診断を受けたなら、これから一体どうなってしまうのか、治せない病を抱えながら生きていけるのだろうかと、不安や焦りに押しつぶされそうになってもおかしくはありません。ところがそれとは逆で、医師の診断を素直に受け入れることができました。
なぜなら、確定診断を受ける前から、症状の進行度合いを見てもかなりひどい状態だろうと自覚できていたからです。むしろ、やっと本当の病気がわかったんだという、安堵感にも似た落ち着きがありました。

治療方針の検討

検討時期:2020年8月〜2021年10月

選択肢

これまで長年にわたり治療を続けてきた乾癬、それに乾癬性関節炎の治療とあわせ、新たに診断された強直性脊椎炎にも適応する治療薬があると医師から説明を受けました。その薬が「生物学的製剤」です。しかし生物学的製剤の使用には2つの大きなネックがありました。
1つは「感染症」です。薬の投与により体の免疫機能が低下するため、風邪に似た症状が出たり、肺炎などにも注意が必要です。2つ目は「薬の値段」です。今までのどの薬よりも高額で経済的な負担が大きくなるため、治療を継続できるのか懸念がありました。

方針決定

強直性脊椎炎と診断を受けたのが2020年。この年から世界的に蔓延したコロナウィルスにより、免疫を高めなければならない時期に、逆に免疫を低下させてしまう生物学的製剤を投与することは非常に抵抗を感じていました。そのため、まずはコロナワクチンを数回接種し、ある程度の免疫力をつけてから治療を開始しましょうとなりました。
もう1つの懸念だった薬の費用問題。これについては、指定難病の医療費助成を申請したところ、審査により重症度分類に該当すると認定されたため、受給者証が交付されました。この助成制度により、高額な生物学的製剤の治療費をまかなえるめどが立ちました。

治療のプロセス・結果(1):リハビリ

治療の時期・内容:2019年8月〜

1か月に1回ほど、クリニックへリハビリ通院。
1、電気治療
首と肩にパッドを貼り付け、適度な電気刺激を受けて筋肉のコリをほぐします。
2、温熱療法
バスタオルで巻いた保温器を首~肩にあてます。温熱によって血行が促進され、コリや痛みの緩和につながります。
3、全身マッサージ機
ウォーターベッドタイプのマッサージ機は、ローラーが動くたびに全身がユラユラとし、まるで波の上に浮かんでいるような気持ち良さです。体への圧迫感も少なく、全身がほぐれます。
4、徒手療法
最後に理学療法士によるリハビリが行われます。専門的な技術で筋肉や関節を動かし、可動域の改善や痛みの軽減を図ります。

治療前の準備

まだ指定難病の診断を受けていない2019年から、筋肉のコリと関節痛の緩和を目的としてリハビリを実施することになりました。リハビリ施設は数多くあるのかと思いきや、主治医から提示された施設は2か所ほどでした。1つ目は家から車で5分ほどで行ける整形外科のクリニック、もう一つは車で30分かかるリハビリテーションのクリニックでした。まずは近距離にある個人医の整形外科でリハビリを開始しました。

治療中の出来事

リハビリを開始してから数か月。筋肉のコリがあまりほぐれず、痛みも緩和しなかったため主治医に相談したところ、ここでのリハビリを中止。そして車で30分以上かかるもう1か所のクリニックでリハビリを行うことになりました。
クリニックを受診した時点ですでに首の強直が著しく、上・下・左・右を向くことや後ろを振り返ることができないほど症状が進行していました。そのため、主に首~肩周辺の筋肉や関節の可動域を確保するためにリハビリを行いました。
リハビリ室には数十人の患者がおり、それぞれが懸命にリハビリを行う姿を見て、私も身体機能の向上を目指して頑張ろうという気持ちになりました。

治療等の感想

時に、リハビリは痛みとの闘いでもあるので継続する意欲が薄らいでしまう場合もあります。そんな私たちを励まし、少しでも早く社会復帰が叶うようにと丁寧な施術をしてくれるリハビリの先生たちに感謝しています。

治療等の経過

柔軟性を失っていた首や肩、腰回りの筋肉がほぐれ、肩コリや腰痛が改善しました。リハビリで教わったストレッチを自宅でも実践しています。
ただし、強直してほとんど動かせなくなった首は、すでに骨自体が固まっているため、今後リハビリを重ねても自由に動かせる見込みはないでしょう。
それでもリハビリを続けることで、柔軟性を高めて筋肉の衰えを防ぐことができますので、今後も続けていきたいです。

治療のプロセス・結果(2):生物学的製剤による治療

治療の時期・内容:2021年10月〜2026年5月

生物学的製剤は、遺伝子組み換え技術や細胞培養技術を用いて製造したタンパク質を有効成分とする医薬品です。この薬を飲み薬として服用すると、消化酵素によって成分が分解されてしまうため、そのほとんどが内服ではなく皮下注射または点滴によって投与します。
投与する際には、病院に通院して点滴を受けるか、あるいは医師や看護師から注射器の取り扱い方や管理方法などのレクチャーを受け、自宅に持ち帰って自己注射をします。
点滴を受ける場合、医師や看護師による管理の下で投与するため安心感があります。しかし毎回通院しなければならず、おのずと時間と費用もかかります。
自己注射では「自分で自分に注射を打つ」といった、いくぶんかの恐怖心があるものの、慣れさえすれば問題視するものではなく、時間と費用も削減できるため、私は自己注射ができるタイプのものにしました。

治療前の準備

  • 2020年12月 指定難病の受給者証交付
  • 2021年10月 3回目となるコロナワクチンの接種が終了

高額な治療薬の費用と免疫低下による感染症の懸念事項については、受給者証の交付とコロナワクチンの接種によってようやく解消されました。治療を開始するにあたり、生物学的製剤は感染症などが疑われる場合には使用できませんので、血液検査や胸部X線の事前検査をしました。結果、問題がありませんでしたので治療を開始しました。

治療中の出来事

自己注射の初回は結構緊張した記憶があります。注射した部位は太ももで、注射針が刺さった瞬間はチクッと痛みがありましたが、その後はほとんど感じません。薬液が注入される時間はたった10秒程度なので、あっという間に終わりました。注射針が刺さった太ももを見ると、ごくわずかに出血がありましたので、アルコール消毒綿でしばらく押さえながらふき取りました。
薬の投与は毎日ではなく2週間に1回です。投与の間隔に幅があるので精神的に余裕が持てます。投与日にはなるべく良好な体調となるよう、日頃から体調管理には十分注意をはらっています。

治療等の感想

  • 自己注射に慣れる
    前述したように、自己注射は自分で自分に注射を打つという抵抗感があることです。ですが実際にやってみると怖さもなく、難なく注射できることに安心できました。
  • 薬の管理も大切
    自己注射の場合、薬の管理も重要です。生物学的製剤は原則冷蔵保存となりますので、自宅の冷蔵庫で保管となります。薬の保管温度はあらかじめ決められていますので、その範囲内になるよう庫内の冷蔵温度を設定します。また破損しないように取り扱う必要もあります。
  • 食材と分離したスペースで
    私の場合、一度の診察で3か月分の注射キット(6箱分)を処方されます。1箱の大きさは500mlのペットボトルとほぼ同等のため、6箱分となるとそれなりのスペースを庫内で確保しなければならず、食材との場所取り合戦に悩む時があります。

治療等の経過

生物学的製剤を初回に投与してから数日後、関節痛が少し和らいでいるのがわかりました。そして3回目を投与してから1週間後、頭からくるぶしまでほぼ全身にはびこっていた乾癬が、左腕の二の腕部分と左足のふくらはぎの一部を除いてほとんど消え去りました。1
また全身の関節痛もおよそ7割方が改善し、痛み止めを毎日服用しなくても痛みをコントロールできるようになりました。効果は非常に顕著で、症状が劇的に改善したことに感動しています。これといって副作用も出ていないのが幸いです。
医療費助成制度の恩恵を受けながら、現在も生物学的製剤での治療を続けています。

感想と伝えたいこと

感想

生物学的製剤およびリハビリ治療によって改善した主なもの

  • 朝の寝起きに1時間かかっていたのが15分で起き上がれるようになった2
  • 腰をゆっくりと曲げて前かがみになり、床から物を拾えるようになった
  • 立ったまま靴下をはけるようになった
  • 階段は手すりをつかまらずに1段ずつあがれるようになった

今まで当たり前にできていた動作が病気を患うことで一変し、日常の生活に支障が出るまでになりました。それでもめげずに治療を続け、困難を乗り越えてきたからこそ失ったものの大切さに気がつきました。これらの経験が、私の人生観を大きく変えてくれました。

伝えたいこと

もともと患っていた乾癬と乾癬性関節炎、そして指定難病の強直性脊椎炎と、現代医学では治すことができない病を3つも抱えることになろうとは思いもしませんでした。自分はこれからどうやって生きて行けばいいのかと失望した時期もありましたが、「決してあきらめない」と自分に言い聞かせ、困難を背負いながらも一歩を踏み出してきたからこそ、今があると感じています。
たとえ暗い現実に襲われ、心が折れそうなほど困難な状況でも、あなたが踏み出す一歩にもいつか必ず光がさすことを信じてください。


関連する体験談

  1. 【注釈】 強直性脊柱炎の生物学製剤であるTNF阻害薬は、乾癬への治療薬としても使われています。 ↩︎
  2. 【注釈】 朝のこわばりが改善したことによる効果 ↩︎

コメント