
Ayrtonさんのジャーニー
Ayrtonさんのプロフィール
患者との関係性 本人
病気発症時のご年齢 30代
性別 男性
病名 精巣腫瘍
診療科 泌尿器科
治療箇所/部位 精巣、リンパ節
初期症状 腰の痛みがあり、仕事柄腰痛は経験していたため大きな問題と
捉えていなかった。整形外科を受診したものの特に問題はなく、
コルセットを着用する
- 2011年4月
- 初期症状
- 診察のきっかけ
- 病気判明
- 2011年
8月~9月- 選択肢
- 方針決定
- 2011年
9月~11月- 治療前の準備
- 治療中の出来事
- 治療の感想
- 治療後の経過
- 治療後の結果
- 2012年8月
- 治療前の準備
- 治療の感想
- 治療後の経過
- 治療後の結果
- 2012年9月
- 治療前の準備
- 治療中の出来事
- 治療の感想
- 治療後の経過
- 治療後の結果
- 2024年9月
- 伝えたいこと
- 感想
Ayrtonさんの体験談
病気の診断
初期症状が現れた時期:2011年4月 病気判明の時期:2011年8月
初期症状
腰の痛みがあり、仕事柄腰痛は経験していたため大きな問題と捉えていなかった。整形外科を受診したものの特に問題はなく、コルセットを着用する
診察のきっかけ
夜寝ていても腰の痛み1を感じるようになり、深夜に痛みで目が覚めるようになった。そのため、もう一度内科で診療してもらったが、その際も異常は認められなかった。状況を説明し(夜痛みで目が覚める)精密検査を受けるため、紹介状を書いてもらい県立病院で検査を受けた。
病気判明
精密検査終了後、しばらく待っていると診察室に呼ばれた。CTの画像を見ながら医師から淡々と病名を伝えられた。30代の男性は発症しやすい病気でそんなに心配することはない2と言われたが、すぐには状況が呑み込めなかった。
そのまま、翌日の手術室が急遽空いた3ことから、手術を翌日行う旨を伝えられ、診断に関して考える暇はなかった。一人で宣告を受けたが、もしかすると入院や手術に向けた準備で気が紛れたのかもしれない。
宣告は16時頃行われた。看護師から、これから家に帰って19時までに病院に戻ってきて入院の手続きをするように伝えられ、すぐに妻に連絡をして状況を伝えた。また、上司にも状況を話し業務の引継ぎも電話で同僚に行った。
治療方針の検討
検討時期:2011年8月~9月
選択肢
精密検査終了後、翌日には片方の精巣を摘出する旨を伝えられ、この摘出に関しては選択の余地はなかった。むしろ手術日程の調整をしていれば1か月後くらいの手術になり、考える暇もなく手術に臨めたことはある意味良かったと感じている。(家族は手術当日の説明のみで不安だったのかもしれない)
診察当日は、腫瘍を摘出すれば問題ないこと、手術は簡単だということだけ伝えられ、その後の治療方針については説明がなかったよう記憶している。
(もしかしたら伝えられていたのかもしれないが、目の前のことしか耳に入らなかったのかもしれない)
方針決定
精巣の摘出手術終了後1週間程度は経過を見た。痛みはあったものの通常とあまり変わらない生活を送っていた。
手術後の傷の状況を見ながら、今後の治療方針についての説明があった。精巣から肺とリンパ節に癌が転移しており4、リンパ節の腫れにより神経を圧迫したことにより腰の痛みが出っていたとのことだった。
病理検査に摘出したものを出しており、結果次第で治療方法が決まるということだったと記憶している。
治療については、2つの方法を提示された。1つは抗がん剤治療。1クール3週間(1週間抗がん剤をうち、2週間インターバルを空ける)を3クール行うというもの。
その間は入院となり、最低でも約3か月間の入院となることを。抗がん剤で腫れが収まった(がん細胞が消えた)段階で、リンパ節の摘出をするかどうかを判断するとのことだった。
治療が始まる前の時点では、リンパ節の摘出は大掛かりな手術となりリスクもあるため、抗がん剤で完全にがん細胞が消えれば、できればリンパ節の摘出はしない方が体への負担は少ないだろうという医師の見解だった。
もう一つは放射線治療の選択肢があったが、診断のされたステージでは効果が薄い5ということで、抗がん剤治療一択だったような印象。
治療のプロセス・結果① 化学療法
治療の時期:2011年9月~11月
治療前の準備
化学療法の説明と副作用などについての説明あり。副作用は個人差があること。倦怠感や吐き気、脱毛などの症状が出ること。免疫力が下がるため、手洗いやうがいをこまめにすることなどを伝えられた。
それ以外は制限がなく、食べるものや生活のリズムなどは通常通りで問題ないとのことだった。副作用については一般的な知識(髪の毛が抜ける、吐き気がある)とあまりかけ離れてなかった。
化学療法は3クールを目安に行い、状況を確認しながら進めるということだった。BEP療法6という3種類の薬を使う治療を行った。
化学療法により精子にも影響があり、妊娠の可能性がなくなることも伝えられた。子供を望むのであればパートナーとの話し合いも必要だと思う。(精子保存の対応なども場合によっては必要)
治療中の出来事
化学療法開始から1か月くらいは、副作用もなく通常と変わらない生活を送ることができた。点滴を24時間したままの入院生活だったので、慣れないうちは点滴の針が寝ているうちに抜けてしまうのではないかと治療とは別の個所が気になった。
特に最初の頃は体調の変化もなく仕事ができそう(メールのチェックや進捗の確認など)な感覚だったが、病院という空間からか時間はあってもパソコンを開くモチベーションはあまりなかった。
治療等の感想
1か月を過ぎるころから副作用の症状が出始めた。最初の頃は、病院で出される食事も3食きっちりと食べられる状態だったが、だんだんと食欲もなくなっていった。
副作用7も辛かったが、点滴で常時生理食塩水を補給されており、3時間に一度トイレに行きたくなることが辛かった。特に夜中、せっかく眠れたのに尿意で目が覚めることが辛かった。
また、尿の量を図るように指示されており、毎回、計量カップのようなものに入れて量を図る機械に入れなおすことが面倒臭かった。
副作用は2クール目の途中から明らかに感じるようになり、3クール目に入った時には特に感じるようになった。感じ方は個人差があるとのことだったが、自分としては副作用が大きく感じられる方だと思う。
副作用で髪の毛がすべて抜けてしまったが、寒い時期だったことから帽子を被ることで隠すことができた。
3クール終了後、追加で1クール実施することが伝えられた。副作用が酷かったので4クール目を始める際は副作用の苦しさを考えて、とてもつらかったが最後の我慢だと思い開始した。
治療等の経過
4クール目終了後、退院の許可が出たが、食べ物や日常生活への制限はなく副作用さえなくなれば、これまで通りの生活にすぐ戻ることが出来た。
1クール3週間で投薬をされるが、最初の1週間は投薬があり、その後の2週間はインターバル(回復)の期間となっている。インターバルの期間の最後の3日くらいは体調が良ければ外泊を認められ家で過ごすことが楽しみだった。
治療等の結果
化学療法で効果ありと診断されリンパ節切除の手術はしなかった。最初に手術した睾丸の傷も痛みをほとんど感じることはなくなった。
定期的に再発がないか検査することになっており3ヵ月ごとに診察をする。
副作用の症状がなければ、これまでと変わらない状態なので、家で療養している時の時間の使い方が分からなかった。医師からは3ヵ月程度自宅療養してから職場復帰くらいのペースでいいと言われていたが2週間程度過ぎた頃から出社するようになった(上司からはゆっくり休めと言われていたが、12月の繁忙時期だったこともあり、リハビリと称して3時間程度会社に行き、電話対応など無理のない範囲で手伝いをした。
治療のプロセス・結果② 後腹膜リンパ節郭清術
治療の時期:2012年8月
治療前の準備
3ヵ月に一度の定期健診で再発が認められた。リンパ節の切除とその後の化学療法を実施することを伝えられた。
化学療法は前回の副作用が辛かったので、またあの副作用を耐えなければいけないのかと思うと気分が重かった。
リンパ節切除(後腹膜リンパ節郭清術)はリスクがあることも伝えられた。血管や神経の側を切除することから出血や麻痺が残る可能性がある。また逆行性射精8の症状も出る場合がある。
治療中の感想
麻酔をして10秒もしないうちに記憶が遠くなっていくのを感じた。目が覚めた時には集中治療室に入っており固くて狭いベットに寝かされて酸素マスクやバイタルチェックの管が装着されていてとても不快だった。
6時間程度と事前に通知されていたが実際には7時間半を要したということで待っていた家族は不安な気持ちだったと思う。
目が覚めてしばらくすると家族と面会した。その時は酸素マスクがとても嫌で外してほしいということばかりを言っていたと思う。
寝返りも打てない状態で24時間、集中治療室で過ごすことは、辛い時間だった。
治療等の経過
腹部を30cmほど切開したため、痛み止めを打ってもらっていたが動くたびに痛みがあり辛かった。傷の回復を待つしかなかったので、時間が経つことで日に日に良くなっていった。
食事制限はなかったため、好きなものを食べることができたのは良かった。内臓を切ったわけではないので早い段階で通常の食事ができる状態だった。
治療等の結果
リスクが高い手術だと伝えられていたが、幸い副作用は出なかった。腹部の傷の痛みだけで、傷の治りを待つのみだった。
治療のプロセス・結果③ 化学療法
治療の時期:2012年9月~12月
治療前の準備
リンパ節の切除から約1か月後から2回目の化学療法がスタートした。体力の回復を待って、化学療法に耐えられると判断された時点でのスタートとなった。
前回とは違う薬を使っての化学療法がスタート。副作用などは同様。
治療中の出来事
一度目の化学療法同様の副作用だった。前回は1クール目は体調の変化はなかったが、今回は1クール目の最後には副作用を感じ始めていた。
吐き気から食事は全くできなくなり、相部屋(6人部屋)だったが、他の人の食事の時間に病院食の匂いだけで気分が悪くなり、動けるときは食事時間はロビーで過ごすようになった。
投薬中はお風呂に入ることもできず、タオルで体を拭くだけというのも辛かった。寒い時期だったので、あまり汗をかくことはなかったが、頭を洗えないことが特に辛かった。
治療等の感想
副作用が出ている時に口に出来たものは、サイダーと豆のお菓子だけだった。妊婦さんのつわりの時ってこんな感じなのかなと思った。(吐き気があり特定のものしか体が受け付けない)
食事ができない時期は最高10㎏体重が落ちた。
治療等の経過
食欲の有無で投薬からの回復のバロメーターになることが自分で分かるようになってきた。
化学療法にも慣れてきて、インターバルの期間、調子のよい時は外出許可をもらい病院周辺の飲食店を食べ歩きをしていた。
治療等の結果
化学療法も回数が進むにつれ副作用が強く出て辛かった。また、投薬後から回復までに時間がかかるようになり、何もできずただ寝て時間が経つのを待つだけというのも辛かった。
術後すぐには気づかなかったが、リンパ節を切除したことで足がすぐ浮腫むようになった。また、逆行性射精の症状も出た。
3ヵ月以上の入院を2回したことで、体力も落ちて疲れやすくなった。
日常生活を送るには何の問題もなく、食事などの制限もなく、薬の服用もない。手術前と同じような生活を送ることが出来ている。
伝えたいことと感想
伝えたいこと
化学療法中は時間があるので映画を見ようとか本を読もうとか時間をどうやって潰すかを考えていたが、実際に治療が始まると集中して何かをすることは難しいということが分かった。
また、副作用は自分が思っていた以上に辛く、24時間だるさや吐き気が襲ってくるのでとてもつらかった。時間が過ぎることで少しづつ回復していくのを待つだけで吐き気を抑える薬も気休め程度だった気がする。
感想
病院のベッドで過ごしていると看護師さんたちの献身的な看護には改めて感謝。
普段の何気ない生活がとても大事だということに気づかされる。睡眠時間を削って無理をしすぎると病気になってしっぺ返しがあるので、ほどほどに頑張りしっかり休むことも大事。
- 【注釈】一般的な話ですが、精巣のがんの初期段階では、自覚症状は睾丸が大きくなること以外に痛みはなく自覚症状はほとんどないようです。しかし、転移した段階では、腰痛や背中の痛み、呼吸困難、咳、頭痛があり、骨に転移すると骨折などが見られます。 ↩︎
- 【注釈】CTを見ながらの説明ですから、担当医はすでに肺に転移していることを把握できています。心配することはありません、というのは、患者を不安に陥れないための配慮です。ですが、後に、インフォームド・コンセントが十分でなかったといわれる可能性が残る説明でもあります。とても難しいところなのです。 ↩︎
- 【注釈】空いてなくても、急がない手術を先伸ばしにしても、手術室を確保したのだと思います。 ↩︎
- 【注釈】術式が開腹手術か腹腔鏡手術かが記載されていませんが、精巣癌の場合は基本的に開腹手術が主流です。リンパ節への転移は手術中に摘出したリンパ節を顕微鏡で見て判断したものです。肺への転移は開腹手術ではわかりません。これは既に初診時にCTで判断できています。 ↩︎
- 【注釈】放射線治療の効果が期待できないと説明されています。これはステージがすでに進んでいることを意味します。腹腔のリンパ節と肺の両方を同時治療を放射線で行うと仮定すると、照射する範囲が二か所になり放射線の量が多くなります。また、他にすでに転移しているのに見つかっていない可能性もあります。となると、全身に行き渡る抗ガン薬の方が効果的でしょう。 ↩︎
- 【注釈】精巣がんは抗がん剤の効果が高い病気です。転移のある場合でも治療効果が期待できます。通常、複数の作用の異なる抗がん剤を組み合わせた治療を行います。BEP療法とは抗ガン薬の薬品名ブレオマイシン、エトポシド、シスプラチンの頭文字をとった治療です。この療法は、最も標準的な抗がん剤治療で、導入化学療法とも呼ばれます。 ↩︎
- 【注釈】嘔気や嘔吐、食欲不振などの消化器症状、脱毛、味覚障害などが高い頻度で認められます。骨髄抑制で貧血も生じます。 ↩︎
- 【注釈】射精時に精液が膀胱に流れてしまう状態。 ↩︎
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