脳脊髄液減少症(低髄液症候群)の体験談【しげさん】

  • 当サイトは、個人の貴重な経験を発信・共有することを目的としています。最新の医学情報・治療方法などの情報を提供するものではありません。病状や経過、治療への向き合い方などはそれぞれ異なりますので、必ずご自身の主治医と相談してください。
  • 体験談は医師によるチェックを行っており、明らかな間違いや誤解を招くような表現はないようにしていますが、なるべく発信者の生の声をお届けするために訂正は最小限にとどめています。

しげさんのジャーニー

しげさんのプロフィール
患者との関係性   本人
病気発症時のご年齢 20代
性別        男性
居住地区      東京都

病名        脳脊髄液減少症(低髄液圧症候群)
診療科       脳神経外科(初診は整形外科・ペインクリニック)
治療箇所/部位   脳・脊髄

しげさんのジャーニー

しげさんの体験談

病気の診断

初期症状が現れた時期:2005年4月  病気判明の時期:2005年12月

初期症状

2005 年 4 月下旬、ゴールデンウィーク直前に首・肩・背部にかつて経験のない鋭い痛みが突然出現いたしました1。痛みは一日の中で強弱を繰り返しましたが持続的で、市販鎮痛薬を服用してもほとんど効果が得られず、連休中は横になる以外の選択肢がないほど生活動作が制限されました。

診察のきっかけ

連休明けも痛みが改善せず欠勤が続いたため、まずは整形外科を受診しました。レントゲン画像上異常が見当たらず湿布のみで経過観察となりましたが症状が続いたため、家族の勧めでペインクリニックへ転院。それでも原因不明のままであったため、患者会を通じ脳脊髄液減少症を扱う脳神経外科専門医に紹介状をいただきました。

検査

2005 年 7 月、専門外来で「脳脊髄液減少症疑い」と説明を受けましたが、検査入院のベッド待機に5か月を要しました。12 月の入院では RI シンチグラフィ・MRI・マルチスライス CT を組み合わせ、造影剤の脊髄腔内分布を 1 時間・6 時間・24 時間後に連続撮影。硬膜外への造影剤漏出と髄液貯留が確認され、脳脊髄液減少症と確定診断されました。2

病気判明

長期間原因不明の痛みにさいなまれていたので、病名が判明した瞬間は安堵が大きく、不安と戸惑いはありつつも「治療法が存在する」と伺い前向きな気持ちで治療に臨む決意を固めました。

治療方針の検討

検討時期:2005年12月

選択肢

医師からは①自己血硬膜外パッチ(ブラッドパッチ)で髄液漏出部位を塞ぐ、②生理食塩水・人工髄液パッチで様子をみる、③鎮痛薬・抗けいれん薬等で症状を緩和しながら経過観察、の三つの選択肢3が提示されました。

方針決定

最も実績があり侵襲の低い自己血ブラッドパッチを第一選択とし、効果が不十分な場合は追加パッチや薬物療法を段階的に組み合わせる方針で治療を進めることにしました。

治療のプロセス・結果:自己血ブラッドパッチ

治療の時期:2005年12月〜2018年9月

治療前の準備

漏出部位を画像で特定したうえで局所麻酔を行い、直前に採取した自己血を硬膜外腔へ注入する手技について担当医と詳細を確認いたしました。

治療中の出来事

処置そのものは約 30 分で終了し、その日のうちに痛みがわずかに軽減いたしました。4 翌日からは 1 週間の絶対安静を指示されましたが、改善を過信して動き過ぎてしまい、結果として効果が限定的となったと当時を振り返り考えています。

治療等の感想

注入時に圧迫感を覚えましたが耐えられる範囲でした。痛みが完全には消えず、安静の重要性を痛感しました。

治療等の経過

2006 年 3 月に 2 回目、2014 年に 3 回目、2018 年に 4 回目のブラッドパッチを受けました。3 回目は最新装置下で実施し数か月間は大幅に改善いたしましたが、長期寛解には至らず、以後は鎮痛薬・抗けいれん薬・医療用麻薬など薬物療法と、整体や鍼、CBD オイルなどを組み合わせ疼痛を管理しています。

感想と伝えたいこと

感想

初回パッチで完治を期待し安静を徹底できなかったことを少し残念に思います。現在は痛みと共存しながら仕事量と生活リズムを調整し、ストレス管理と定期通院で QOL の維持に努めております。

伝えたいこと

闘病が二十年を超え、これまでを振り返ると社会復帰を焦らずに治療を継続し、ほどほどのところで折り合いをつけることが自身には大事だったなと感じます。歳を重ねることで、様々経験や葛藤を乗り越え、症状と共に生きる勘所が少しずつ分かってきたように思います。



関連する体験談

  1. 【注釈】頭痛、首の痛み、めまいで発症します。慢性化すると、微熱、集中力や記憶力、思考力の低下、睡眠障害、視力の低下、聴力の低下、耳鳴り、顔や喉の違和感、首・背中・腰の痛み、動悸、息切れ、腹痛、下痢、便秘など様々な症状が出ます。
    これらの症状は天候や気圧など環境の影響を受けやすく、調子がよいときは特に症状が現れないこともあります。また、症状がある場合でも水分を取ることや安静を心がけることで症状が和らぐ可能性があります。 ↩︎
  2. 【注釈】確定診断には造影MRI検査、脊椎MRI、ミエログラフィーなどの画像検査が行われます。造影MRI検査:造影剤を静注すると脳脊髄液に混じってしみ出してきます。その造影剤の流れを観察すると水漏れがある場所が突き止められるのです。あなたが受けた検査は、完璧な診断過程です。 ↩︎
  3. 【注釈】ブラッドパッチ、保存的治療、硬膜外腔生理食塩水注入、という3つの治療法があります。
    ブラッドパッチ(硬膜外自家血注入):脳脊髄液が漏れ出ている部分に自身の静脈血を注入し、血液が固まるはたらきを生かして漏出を塞ぐ治療方法で保険適用されています。
    保存的治療:安静、点滴による水分補給、経口の水分摂取(できれば経口補水液)。自覚症状に応じて、鎮痛薬などの薬物療法。
    硬膜外腔生理食塩水注入:脳脊髄液が減少した硬膜内に生理食塩水を注入して、減少した脳脊髄液を補います。 ↩︎
  4. 【注釈】漏れが止められれば完治できますが、それがなかなかに難しいのです。検査の過程を見ても、超一流の医療水準の病院であることがうかがわれます。 ↩︎

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