筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群の体験談【なつさん】

【BC039】
  • 当サイトは、個人の貴重な経験を発信・共有することを目的としています。最新の医学情報・治療方法などの情報を提供するものではありません。病状や経過、治療への向き合い方などはそれぞれ異なりますので、必ずご自身の主治医と相談してください。
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なつさんのジャーニー

なつさんのプロフィール
患者との関係性   本人
病気発症時のご年齢 10代1
性別        女性
居住地区      北海道

病名        筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群2
診療科       疲労・睡眠外来/脳神経内科

なつさんのジャーニー

なつさんの体験談

病気の診断

初期症状が現れた時期:2001年1月  病気判明の時期:2020年3月

初期症状

インフルエンザ罹患後3、体に力が入らなくなり(脱力感)、歩きにくさ、排尿困難、めまい、吐き気、風邪で熱があるときのような倦怠感、全身の痛み、感覚過敏、味覚異常、睡眠障害(過眠)、思考力の低下などがあった 

診察のきっかけ

めまいや吐き気、脱力感などで座っているのも辛くなり、休んでも回復せず、学校になかなか通えなくなったため

検査

内科、婦人科、脳神経外科、泌尿器科、耳鼻咽喉科(めまいが酷かったため)等で、血液検査4・MRIなど受けたが何もわからず、自律神経の問題とされた。心療内科も受診するが、明確に診断されることはなく20年が経過。
その後、就職するも寝たきり状態5となり、症状をネットで検索、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群を専門的に扱う病院を受診。
症状から慢性疲労症候群(筋痛性脳脊髄炎)と診断された。その後のMRI(脳シンチグラフィー)で慢性疲労症候群に典型的とされる血流低下が認められた。

確定診断

確定診断6

診断名が付いたときには、正直嬉しい気持ちになりました。 
人に説明できると思ったからです。また、どのように今後生活するのが良いのか方向性が見えたことも安心感に繋がりました。7

治療方針の検討

検討時期:2020年3月~8月

選択肢

体調回復のため、1ヶ月入院。安静にしつつ、体を温める温熱療法を定期的に実施。
また、鼻の粘膜の炎症から症状が悪化する人もいるとのことで、Bスポット治療8を行った。
自己免疫が関連しているとの研究もあり、退院後は、免疫抑制剤を服用

方針決定

効果があったとされるものを順に試した。無理のない範囲で活動するため及び転倒防止のため、外出に車椅子を使用するようになった。9

治療のプロセス・結果 温熱療法(和温療法) 

治療の時期:2020年3月~4月

治療前の準備

それまで病名が付かず、無治療で知識もなかったため、「自分は健康だ。運動不足なだけだ」など、自分自身に思い込ませて無理を重ねた結果、寝たきり状態で、座位を保つことや話をすることも難しい状態でした。 
1ヶ月入院し、体を温めることを繰り返しました。 

治療中の出来事

無理をせず、自分なりのペースを保って徐々にリハビリすることが重要と主治医や理学療法士の方から伺い、少しずつ自分にとって無理のない活動をすることで、様々な症状が少しずつ緩和されました。 

治療等の感想

運動しなければと思い、無理に歩いていたことなど「自分にとっての無理」が体調を悪化させていたことが分かり、ペースを落とすことで、格段に生活の質が上がりました。10食事が美味しく感じられるようになったり、車椅子で外出することで、外出できる時間が増えたりと「やりたいこと」が治療前よりできるようになりました。 

治療等の経過

入院して疾患についての教育を受けたことにより、治療前より生活の質は上がりましたが、一方で、Bスポット治療や薬による治療については私には合わず、断念しました。 
Bスポット治療については、通院後の体調の悪化が治療効果より大きく、継続が難しくなりました。 
また、薬については、免疫抑制剤を試しましたが、全身の痛みと下痢が続き服用を断念、漢方薬なども試しましたが、効果を実感することができませんでした。 

感想と伝えたいこと

感想

治療後は、外出に車椅子を使用することにより、起きていられる時間が増え、家族との時間も以前よりずっと楽しめるようになりました。 11

また、仕事については在宅勤務でできることを探し、継続して働けるようになりました。やりたいことは沢山ありますが、「本当にやりたいこと」に絞り「やりたくないこと」をいかに減らすかということに頭を使った結果、人生が豊かになったと感じています。 

伝えたいこと

最初は戸惑うことも多いと思いますが、自分のペースが掴めてくるにつれて、症状と付き合うことにも慣れてきます。「生活の工夫で、やりたくないことを減らせないかな?」「本当にやりたいことをどうにかしてできないかな?」と考えることが大切だと思います。 



関連する体験談

  1. 【注釈】20代から50代の範囲で発症するケースが多く、女性が6~7割程度を占めているようです。 ↩︎
  2. 【注釈】痛みや発熱と同じように、疲労は生体の三大アラームのひとつです。普通の疲れは、少し休養すると治ります。ですが、日常生活もままならないほどの疲労困憊と、まともに物も考えられない状態が半年以上も続くと一大事です。筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群とは、いわゆる慢性疲労などというレベルではない酷さで、仕事や生活習慣が原因ではなく、十分に休養をとっても回復しない病気です。酷い例では、簡単な家事を行っただけで、翌日から一週間ベッドから起き上がれなくなってしまうのです。疲労の程度には個人差があり、何とか働ける程度から寝返りも打てない人もいます。以前は「慢性疲労症候群」の病名のみが使われていましたが、それでは、「慢性的に疲れている疲労]との区別が理解しにくいことから、外国に倣い「筋痛性脳脊髄炎」を併記して使うようになりました。 ↩︎
  3. 【注釈】何らかの誘因とともに、突然発症することがあります。たとえば、風邪(インフルエンザ、新型コロナ)、さまざまな感染症、発熱、外傷、ストレス、トラウマなどが誘因として知られています。加えて、化学物質、紫外線、アレルギー、外科手術、出産、遺伝、環境 なども誘因になります。逆に、疲労やストレスがたまって発症し、徐々に悪化する場合も多くあります。因みに、アレルギー性の病気を持っている人は多いようです。 ↩︎
  4. 【注釈】現在では、アシルカルニチンと呼ばれる特殊な物質の血中濃度が下がっていることが知られています。カルニチンは減量と脂肪燃焼に役立つビタミン様物質で、サプリメントにもなっています。 ↩︎
  5. 【解説】患者の約4分の1は、外出が困難か寝たきりの状態です。 ↩︎
  6. 【注釈】確定診断は以下のようにして行われます。(A)ただ事でない疲れが延々と続きます。疲労感の他に、しばしば次のような症状があります。(B)疼痛[頭痛、筋肉や関節の激しい痛み]、(C)睡眠障害、(D)神経感覚・知覚・運動障害[におい・光・音に対する過敏性、視覚障害、真っすぐ立っていられない]。他に体温調整障害があると、寒い環境で暑く感じることがあります。まず、自覚症状の(A)があり、そこに(B)、(C)、(D)の一つ以上があることです。他覚所見としては、微熱、のどの腫れ、頸部あるいはリンパ節の腫張、筋力低下、関節障害などが認められます。 ↩︎
  7. 【注釈】よくうつ病と誤診されます。鑑別が必要な病気には、睡眠障害、薬物依存症、感染症、甲状腺機能低下症、糖尿病、多発性硬化症などがあります。また、線維筋痛症と呼ばれる病気との鑑別も必要ですが、この病気と合併することが少なくありません。 ↩︎
  8. 【注釈】上咽頭(鼻の奥の突き当り)擦過法とも呼ばれる治療法。塩化亜鉛またはルゴール液に浸した綿棒の先を上咽頭に塗りつける手技で、慢性の上咽頭炎治療として60年以上前に考案されています。効果の是非がわかれる治療法です。 ↩︎
  9. 【注釈】標準的な治療法は確立していません。未だ試行錯誤の段階ですが、以下のような治療法が試みられています。
    ◆薬剤[漢方薬、ビタミンC、ビタミンB12、抗うつ薬、免疫グロブリン、睡眠薬、抗アレルギー薬]
    ◆認知行動療法[何をしたら病状が悪くなるかを知って、それを避ける]
    ◆心理療法、ペーシング
    ◆温熱療法[入浴、温灸]
    ◆運動[患者個人に合った最小限の運動]
    ◆アロマテラピー ↩︎
  10. 【注釈】これが認知行動療法です ↩︎
  11. 【注釈ペーシングでもあります ↩︎

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