
tomoさんのジャーニー
tomoさんのプロフィール
患者との関係性 本人
病気発症時のご年齢 30代
性別 女性1
居住地区 福島県
病名 脊髄小脳変性症2
診療科 脳神経内科
治療箇所/部位 小脳・脊髄
- 2020年1月
〜8月- 初期症状
- 診察のきっかけ
- 病気判明
- 2021年8月
〜12月- 選択肢
- 方針決定
- 2021年12月
〜現在- 治療前の準備
- 治療中の出来事
- 治療の感想
- 治療後の経過
- 2021年12月
〜現在- 治療前の準備
- 治療中の出来事
- 治療の感想
- 治療後の経過
- 2025年8月
- 感想
- 伝えたいこと
tomoさんの体験談
病気の診断
初期症状が現れた時期:2020年1月頃 病気判明の時期:2021年9月
初期症状
立ちくらみ3や足取りのふらつきが増えましたが、自身では疲労仕事や育児の疲れと思っていました。
診察のきっかけ
2021 年初め、出産直後に、言葉がもつれる・ふらつきが強くなり、最初は出産した大学病院の産婦人科に相談、すぐに脳神経内科を受診することになりました。
検査
大学病院で MRI を撮影したところ「小脳が萎縮」と説明を受け、その後検査入院にて様々な検査をしました(その時は自分の身に起きたことが信じられず、検査内容もよく覚えていません…)。他疾患の除外を経て 2021 年 8 月に脊髄小脳変性症と確定診断を受けました。
病気判明
頭が真っ白になり、「生まれたばかりの子どもを抱えてどう生きれば」と不安が押し寄せました。医師から「進行はゆっくりな病気。今後のことは、ゆっくり考えていきましょう、」と言われましたが、夢であってほしいという思いが強く、焦る気持ちが大きかったです。このころから1年くらいは、自分が自分ではない感じ、まるで映画を見ているような感じが続きました。
治療方針の検討
検討時期:2021年8月~2021年12月
選択肢
生まれたばかりの赤ちゃんがいて、まずは子どもとの生活を考えて実家(福島)に帰りました。病院も、東京の大学病院から地域の総合病院に転院。転院先の病院で主治医から言われたのは、「症状もそんなに重くないから、薬も飲まず、経過観察でいいのではないか」ということでした。その時は、「病院の先生が言うのだからそうなのか」と思いましたが、進行性の難病になり「自分には何もできることは無い」という無力感を強烈に感じました。
精神的な影響もあったのか、その後、急に呂律が回らなくなり、家族との会話も難しくなったり、食事もうまく噛めないようになったりしました。病気が急に進行したのかと怖くなり、病院でMRIなどの検査をしましたが特に問題はなく。
症状は数週間でよくなりましたが、その時改めて「何もせず病気の進行を待つのではなく、自分に出来ることをしたい」と強く思い、主治医に、薬を飲みたいこと、しゃべりのリハビリを受けたいことを泣きながら伝えました。
方針決定
主治医も私の考えを尊重してくれて、病気の進行を抑える薬4を飲み、週に1回言語聴覚士のリハビリを受けることになりました。進行性の病気なので症状は進みますが、自分で選択して自分で決めている、ということがメンタルヘルスにも良い影響があると思っています。
治療のプロセス・結果①:病気の進行を抑える薬(内服)
治療の時期:2021年12月〜現在
治療前の準備
副作用と経過観察のため、1~2か月に一度診察、3~4か月に一度は血液検査をしています。
治療中の出来事
もうすぐ確定診断を受けてから4年、ゆっくりではありますが症状が進行していることは感じます。手すり無しでも登れた階段が支え無しでは登れなくなった。PCのキーボードの打ち間違いが増えたなどです。身体機能が失われていくのはとてもつらく、悲しい気持ちになることもありますが、自分で選び決めた治療やリハビリ5をしているということが、精神的な支えになっていると思います。
治療等の感想
「自分のことは自分で決める」ことの大切さを知りました。医師は医療の専門家ですが、病気になった自分のことを一番知っているのは自分自身です。医師からは病気の一般的な症状や予後・治療法を教えてもらえますが、最終的に治療法やリハビリをどうするのか決めるのは患者本人だと思います。私ははじめこのことが分かっていませんでした。「お医者さんがいうのだからそうすべきだろう」と思っていました。もちろん、緊急の治療を必要とする病気であれば、まず医師の指示に従うのが良いのかもしれません。ただ、「医師の指示に従う」という判断を自分がしたということは、その後も続く人生において自分の支えになると思います。
治療等の経過
病気が進行しているのは実感していますが、「じゃあ、私は何がしたいのか」を考えて、主治医にも伝えています。根本的な治療法がないからこそ、「どう生きたいか」は常に考えています。
治療のプロセス・結果②:言語聴覚士6によるリハビリ
治療の時期:2021年12月〜現在
治療前の準備
特にありません。
治療中の出来事
言語聴覚士のリハビリでは、発話や文章を読む練習をしています。日によって症状に変化があるので、その日の状態に応じて、練習内容を変えてくれます。私の場合、過去に人前で話す仕事をしていたこともあり、構音障害が一番精神的につらいものでしたし、進行することを考えると悲しいです。ですが、リハビリを通じて、自分が今できることをしているという事実が自信になっています。
治療等の感想
母親として子どもに絵本を読めることが大きな自信となり、リハビリ継続の動機になっています。
薬を飲んでもリハビリをしても、ゆっくりと病気が進行することはつらいです。一方で、最近40歳になり年齢によるシミやしわを見て、年を取ることも同じではないかと思うようになりました。どんなに美容液を塗っても肌の老化は避けられないですよね(苦笑)。でも、食事や睡眠に気を付けることで老化が進むことをゆっくりにすることは出来るし、むしろ幸せに年を取ることは出来る。そう思いながら、薬を飲み、リハビリ7をしています。
治療等の経過
病気になる前から働いていた東京の会社で、フルリモートで仕事を続けています。毎朝オンラインでmtgがありますが支障なく会話出来ていますし、年に数回は出社しています。自分の足で会社に行きたい、自分の声で話がしたいという思いが、リハビリなどのモチベーションになっています。
私にとって、薬やリハビリは手段であり目的ではないと思っています。やりたいこと(仕事や子育て)をして幸せに生きることが目的であり、そのために今ある身体機能を維持する、病気の進行を緩やかにするためにリハビリをしています。
感想と伝えたいこと
感想
病気になったばかりの頃は、呂律が回らない、ふらつく「こんな姿を人に見せたくない」と思って、ほとんどベッドから起き上がれない状態でした。自分が自分ではない感じ、自分に起きていることが現実とは思えず、映画でも見ているような気持でした。でも、病気になる前と変わらずに接してくれる家族、特に二人の子どもの存在、話を聞いてくれる友達、そして自分から行動してつながれた患者会の人、病気を持ちながら子育てする団体の活動、いろんなものが組み合わさって、何とか起き上がって生きていこうと思えるようになりました。
▽難病になるまで私は、大きな病気をしたこともなく、このまま普通の人生が続いていくと思っていました。進行性の難病になり、健康でいること、もっと言うと生きていることは当たり前ではないということを実感しました。言いたいことは言い、会いたい人には会い、やりたいことはやり、毎日を過ごそうと思っています。
伝えたいこと
病気が分かったのは2021年で東京五輪・パラリンピックが開催された年です。パラリンピック前には、テレビでは障がいを乗り越えて活躍する選手の特集ばかりで、私はテレビを見ることが出来ませんでした。「前向き」になれない自分に余計落ち込んでしまいました。そんな気持ちを闘病経験のある会社の先輩に相談したところ、「無理に前向きにならなくていいですよ。無理をしても必ず揺り戻しが来ます。」という言葉をもらい救われました。病気や障がいはすぐ受け入れられるものでは無いと思います。混乱してパニックになってしまうこと、怒りがわいてくること、落ち込んでしまうこともあると思いますし、進行性の病気の私は、今でもそうです。でも、確定診断を受けた4年前よりは落ち着いて考えることが出来るようになり、仕事も家事も育児も出来るようになりました。
病気を経験したり、今も病気を抱えたりしながら、いろんな活動をしている人に出会い、人の持つレジリエンスってすごいなと感じています。
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- 【注釈】30歳から40歳代での発症が多くみられます。男女比は2対3。1/3の症例で遺伝性が認められます。常染色体劣性遺伝性脊髄小脳変性症と呼ばれる例では小児期に発症しやすいことが知られています。 ↩︎
- 【注釈】動かすことは出来るのに、上手に動かすことが出来ないという症状です。運動失調症状と呼ばれます。口は動いてもろれつが回らない、お箸は持ててても上手におかずがつかめない、靴は履けてもまっすぐ歩けないという状態です。
痙性対麻痺では、足の突っ張り、歩きにくさが特徴的な症状です。これらの症状がとてもゆっくりと進みます。
指定難病です。小脳や脊髄の神経細胞が障害されることで様々な症状を引き起こす疾患の総称です。
原因は具体的にはよくわかっていませんが、肺がんやお酒、抗てんかん薬、自己免疫性疾患による小脳炎、感染など、それ自体で小脳の病気を引き起こしうるものは悪い影響を与える可能性があると考えられています。 ↩︎ - 【注釈】医師としての個人的な記憶ですが、私はめまいを訴える患者さんの中でこの病気の人を何人も診察していました。 ↩︎
- 【注釈】運動失調に対して、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン誘導体である経口薬タルチレリン水和物(商品名:セレジスト)やプロチレリン酒石酸塩(商品名:同名)、が使われます。その他、足のつっぱり感、めまい感、などに対して、症状に応じて薬で治療します。
ですが、本稿では事実も説明する必要があります。現時点では、残念ながら、本疾患に間違いなく有効であることが確かめられた治療法はまだ開発されていません。今後、必ず、有効性のある薬剤が開発されることを期待しています。
そして、リハビリ治療が、あらゆる薬物治療よりも効果があることも知られています。
ちなみに、セレジストは我が国が開発した20世紀を代表する創薬といわれた薬です。 ↩︎ - 【注釈】リハビリ治療は、あらゆる薬物治療よりも効果があります。 ↩︎
- 【注釈】言語聴覚士はことばによるコミュニケーションに問題がある方に専門的サービスを提供し、自分らしい生活を構築できるよう支援する専門職です。また、摂食・嚥下の問題にも専門的に対応します。 ↩︎
- 【注釈】リハビリ治療は、あらゆる薬物治療よりも効果があります。 ↩︎
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