IgG4関連疾患・ミクリッツ病の体験談【たなえさん】

  • 当サイトは、個人の貴重な経験を発信・共有することを目的としています。最新の医学情報・治療方法などの情報を提供するものではありません。病状や経過、治療への向き合い方などはそれぞれ異なりますので、必ずご自身の主治医と相談してください。
  • 体験談は医師によるチェックを行っており、明らかな間違いや誤解を招くような表現はないようにしていますが、なるべく発信者の生の声をお届けするために訂正は最小限にとどめています。

たなえさんのジャーニー

たなえさんのプロフィール
患者との関係性   本人
病気発症時のご年齢 30代、女性
性別        女性
居住地区      兵庫県

病名        IgG4関連疾患1、ミクリッツ病
診療科       総合診療科、リウマチ科、膠原病科
治療箇所/部位   30代、女性2

たなえさんのジャーニー

たなえさんの体験談

病気の診断

初期症状が現れた時期:2009年4月頃  病気判明の時期:2009年5月

初期症状

ある日瞼を触った時に目の外側にくりくりとした硬いものに触れ、しばらく放置していたらどんどん腫れてきたが痛みやかゆみはなかった。

診察のきっかけ

そのくりくりが腫れてきてしかも両サイド同時3だったのでこれは何かおかしいと思ったのすぐ病院へ行きました。

検査

まず私の状況としては診断がつくまで2段階となります。

2009年 →涙腺だけ腫れてIgG4は範囲内4(ステロイド治療→減薬→再燃→治療中止)

2012年 →涙腺、耳下腺が腫れIgG4は4445(ステロイド治療→現在)

2009年当時母が通院していた近所の眼科へ行ったところ、その先生も見たことない症状だが、涙腺が腫れているのは間違いないだろうと、眼腫瘍で有名な先生を探してみるので、後日来てくださいということで数日後行き、別の先生を紹介していただきました。

病気判明

2009年当時は血液検査ではIgG4の値は上がっておらず、(IgG4関連疾患6)とは診断がつきませんでした。 この値が上がっていたらミクリッツ病というのがありますが時々こういう方もいらっしゃいますよと先生に言われましたが、その時はわけがわからずに、なんかよくわからない状態になってしまったどうなるんだろうという思いでした。

治療方針の検討

検討時期:2009年5月~2009年5月

選択肢

シェーグレン症候群と似てはいるがIgG4の値が上がっていれば別の病気ということになるが、今のところ治す方法が見つかっておらず、ステロイドで腫れを抑える程度しかできないと告げられた7。 放置で治る人もまれにいるが、ほとんどはステロイドで抑えてやめると再発して、の繰り返しになるとも。腫れた部分の切除はどうかとの問いには切るほどのサイズではないのでそのままにするか、ステロイドを飲むか、ぐらいの選択肢になるという事でした。

方針決定

切るほどではないとは言われたものの、ステロイドはこわいという思いを漠然と持っていたし、当時30代半ばで結婚していなかったため、やはり見た目が気になって切ってしまおうかとも思っていました。その時相談した友人が「切るとその部分が弱くなるし傷もできるので切らない方がいいのでは」という意見をくれました。私も実のところはそういう思いもあったので切るのはやめてそのままで行こうかとも思いました。そこで、何十年も前からリウマチでステロイドを飲み続けているいとこに相談したところ、ステロイドはコワイ薬だと言われているけども、ちゃんと使用すれば効き目があるしコワイ薬ではない8、と話してくれました。それを聞いてステロイドを飲んでみようと思いました。

治療のプロセス・結果 服薬治療

治療の時期:2009年6月〜2009年10月

治療前の準備

ステロイドを飲むと決めてからは決められた量をひたすら飲んで、減薬していく9という日々。特に準備はありませんでした。

治療中の出来事

ステロイドでムーンフェイス10などの症状が出るのは知っていたが皮膚がとてもぶよぶよになって薄い感じがして色白になった。ちょっと何かに腕や足をぶつけたらずるっと皮がむけてしまいそうなそんな感じになったのが非常に不安でした。

治療等の感想

ステロイドを飲み始めて2~3日で涙腺があっさり引いた時には非常に驚いたとともに、ステロイドの威力を思い知らされました。そして減薬していくとあっさり腫れが再燃し、これもまたステロイドの威力を思いしらされることになりました。腫れが引くと久々に自分の顔を見たような感じになって喜んでいたのですが、減薬するとすぐ腫れたので再び視野が狭くなり、気持ちもへこみました。ステロイドしか打つ手がない病気はステロイドの増量、減薬で症状が変わってくるのでそこに一喜一憂してしまう事が多かったです。

治療等の経過

ステロイドを減量して再燃したためステロイド治療はそこで終了し、当時ひどくなってきていたドライマウスをなんとかしたくて漢方を始めました。徐々に効き始めたところで、普段酸っぱいものは好きではない私が酸っぱいグミを食べたことにより唾液腺を刺激したのか、普段よりはるかに唾液が出て来てそれを機にドライマウスはほぼ改善しました。しかし涙腺は依然と腫れたままだったため、鍼治療を試すことになります。鍼治療では2~3日は効いていて涙腺が小さくなるのですが、それ以上改善はされませんでした。鍼治療には1年程通いましたが、その間自分の体の状態をよく観察するようになり、お酒を飲むと涙腺が小さくなる(血流に関係?)ことに気づきました。一年後MRIを受けて涙腺の大きさに変わりがなかったので鍼治療は終了。そして、血液検査的には悪くなく、ただ涙腺が腫れているだけなので我慢してこのままの顔で生きていくしかないと諦め始めた時、耳下腺、涙腺が腫れてきたため今度は膠原病科に行きました。(ここから2012年の段階になります)そこで血液検査の結果IgG4が上がっていたのと生検の結果、IgG4関連疾患のミクリッツ病だと診断がつきました11。そこから再びステロイド治療が始まりましたが、今までになかった症状が次々と出始めます。ひどい鼻づまり、嗅覚異常、喘息のような咳、アルコール摂取で気道が閉まるような感覚が出て咳が止まらなくなるなど、そして何年にも渡ってじわじわと上がってきていたγGTPの値が100をこえ200を超え、2018年4月「原発性胆汁性胆管炎(PBC)12」というこれまた難病指定されている病気だとわかりました。IgG4関連疾患は多臓器に渡り影響が出る病気ではありますが、生検の結果IgG4のせいではありませんでした。治療にはウルソを飲んでおりPBCについては現在落ち着いています。他のIgG4関連疾患の患者さん達と話をするうちに、糖質が非常に関係する思い一日に摂取しすぎていた糖質を体重なりの量になるように制限を始めたところ上記の症状はかなり緩和されました。がIgG4関連疾患が緩解するまでには至らず。2021年12月に電位治療器を購入し一日1時間程度、現在も使用中。ゆるい糖質制限と電位治療器のお陰か2023年7月からステロイドは4mg、2025年2月から3.5mgですがIgGとIgG4は下がり続けています。今後はこのままステロイドを減薬してできれば2mgまで行きたいと思っています。

感想と伝えたいこと

感想

この病気になるまでは体調不良といえば年一回の鼻かぜぐらいで健康について何の気づかいもいらない状態だった私が涙腺が腫れたことでどんどん体調が悪くなってしまいました。もっと早く食事について目を向けていればもっと少ない症状でいられたり、寛解できたのではと思ったりします。PBCの為に油を控えた時にとても体調がよくなったことで食べるものに目を向けるようになりました。

とはいえ、食事は一生の事なので普段は摂取しすぎないようになるべく気を付ける、食べるときは食べる、といった感じで食事制限は続けています。

伝えたいこと

もしIgG4関連疾患だと診断されたら、その時にある症状を書き留めておいて欲しいです。そして食事を見直してみてもらいたいです。私は現在ではパスタ、白米、ポテトチップスはほとんど食べませんがパンは食べます。糖質といっても得意な糖質とそうでない糖質があるように思うからです。その辺もご自身が日々の食事をする時に自分自身を観察してもらうといいと思います。

現在研究が進み、もうすぐ薬が出てくるようですがまだまだ一般人に手の届くものではありませんので基本的にはステロイド治療や免疫抑制剤治療になると思います。そこに行く前にまずは食事を見つめなおして改善できるところはしてもらいたいです。



関連する体験談

  1. 【注釈】新型コロナ感染症のパンデミックの時に予防接種を受ける時、接種をすれば「抗体」が増えるという説明がありました。抗体とは、病気に対する抵抗力です。IgG4はそのような抗体のひとつです。ただし、その抗体も増えすぎると体を壊します。自己免疫疾患と呼ばれるものの一つです。 ↩︎
  2. 【注釈】発症年齢は40代から60代、男女比は1:14と圧倒的に女性に多く、難病に指定されています。 ↩︎
  3. 【注釈】涙腺あるいは耳下腺、顎下腺が持続的(3か月以上)かつ対称的に腫脹する病気はミクリッツ病の可能性が高いです。 ↩︎
  4. 【注釈】ミクリッツ病の確定診断基準は、血液検査で高IgG4血症(135mg/dL以上)ですから、この時点では診断は困難でした。 ↩︎
  5. 【注釈】 ミクリッツ病の確定診断基準に達していました ↩︎
  6. 【注釈】新しい概念でまだよく知られていません。全身の様々な臓器が腫れ、結節(グリグリ)ができる原因不明の病気です。腫れる臓器としては膵臓、胆管、涙腺・唾液腺、中枢神経系、甲状腺、肺、肝臓、消化管、腎臓、前立腺、後腹膜、動脈、リンパ節、皮膚、乳腺などが知られています、と聞くと、どこは大丈夫なのですかと質問したくなるくらいに全身が侵される可能性があります。 ↩︎
  7. 【注釈】主治医は、何らかの自己免疫疾患だろうという印象を持っていたことがよくわかる説明です。このような場合、ステロイドが第一選択になります。 ↩︎
  8. 【注釈】客観的で正しい判断です。 ↩︎
  9. 【注釈】ステロイドを最初は大量に投与し、通常は1~2週間程度で徐々に投与量を減らしていく治療法で、ステロイド漸減(ぜんげん)投与といいます。 ↩︎
  10. 【注釈】満月様顔貌と翻訳される医学用語ですが、顔が満月のように丸くなってしまう状態です。最もよく知られている原因はステロイドの副作用です。若い女性にはつらい経験でしたでしょう。 ↩︎
  11. 【注釈】2012年の血液検査で初めてIgG4の値が444と高くなっていることと、病理組織学的(顕微鏡検査)で陽性所見が得られたのです。 ↩︎
  12. 【注釈】胆汁うっ滞(胆汁の流れが停滞した状態)を生じる慢性の肝臓病です。脂肪の消化・吸収を促進する胆汁は、肝細胞で作られ胆管と呼ばれる管を通って胆のうに蓄えられます。その胆管が破壊されると胆汁は胆嚢に行けず、肝臓内にたまってしまい、肝障害を引き起こします。自己免疫的機序が考えられています。 ↩︎

コメント