潰瘍性大腸炎の体験談【Leoさん】

【BC020】
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  • 体験談は医師によるチェックを行っており、明らかな間違いや誤解を招くような表現はないようにしていますが、なるべく発信者の生の声をお届けするために訂正は最小限にとどめています。

Leoさんのジャーニー

Leoさんのプロフィール
患者との関係性   本人
病気発症時のご年齢 10代
性別        女性
居住地区      東京都

病名        潰瘍性大腸炎1
診療科       消化器内科/消化器外科
治療箇所/部位   大腸
初期症状      友人と旅行していたとき、夕食の途中でお手洗いに行ったら下痢をして、そのとき便器が真っ赤になりました。その日のトイレはずっと同じ様子で、毎回便器の中が赤く染まりました。

Leoさんのジャーニー

Leoさんの体験談

病気の診断

初期症状が現れた時期:1992年10月 病気判明の時期:1992年10月

初期症状

1992年の秋に友人と旅行していたとき、夕食の途中でお手洗いに行ったら下痢をして、そのとき便器が真っ赤になりました。2その日のトイレはずっと同じ様子で、毎回便器の中が赤く染まりました。それでも私はとくに異常だとは思わず、普段食べないカニ料理をたくさん食べたせいかなと思って気にしませんでした。とくにどこか痛むわけでもなかったので、翌日になれば元に戻るだとうと楽観的に思っていました。 

診察のきっかけ

帰宅しても赤い下痢は続いていました。1週間以上続いたころ、さすがに何かおかしいかもと思い、近所の内科を受診しました。 

検査

問診と触診(直腸診)のあとすぐ入院を勧められました。そして「検査をしないとはっきり分からないが大変な病気かもしれない」と言われました。入院後は水以外の飲み物も食べ物も禁止されました。でも私は、ジュースは飲み物だからいいかなと思い、缶ジュース3を買って飲んで、後で看護師に怒られたことを覚えています。しかしそのときはなぜそんなに怒られたのか理由がわかりませんでした。 

病気判明

確定診断4

入院中に、私の病気は指定難病5である潰瘍性大腸炎で、その中の直腸炎型だと言われました。しかし私よりも医師や看護師の方たちが慌てふためいていたように感じました。私はそれよりも学校の定期テストが迫っていることの方が心配で、入院中にどうにかテストを受けに行けないか、ということを考えていました。 

治療方針の検討

検討時期:2020年10月〜2020年12月

選択肢

私が発症した当時、潰瘍性大腸炎の治療の選択肢はとても少なく、内科治療は免疫調整薬とステロイド薬、それでだめなら外科手術というものでした。私は初回発症時からずっと、再燃緩解型という、症状がよくなったり(緩解)悪くなったり(再燃)を繰り返すタイプで、病変もはじめは大腸だけでしたが、左側大腸、全大腸へと広がっていきました。しかしその間にどんどん新しい薬や治療方法が増えたため、その都度医師が私に適した治療方法(5-ASA製剤、ステロイド薬、血球成分除去療法、免疫抑制剤、生物学的製剤、免疫抑制薬など)を選んでくれました。 

しかし、2020年秋ごろに再燃(症状悪化)したときは、主治医に「次に使う薬が効かなかったら手術も考えないといけない」と言われました。私はそれまで様々な薬を副作用によって中止したり、効果が十分でないため中止したりしてきたため、次の薬が唯一の望みであったからです。6

結果的に、その薬も効果が一時的にしか続かず、再び入院して別の薬を試しましたが効果が表れないまま時が過ぎ、今後の方針を主治医と検討することになりました。具体的には①ステロイド治療に切り替える、②血球成分除去療法を試す、③大腸の全摘出手術7、の3つでした。 

方針決定

ステロイドは大量に使えば一定の効果があることは知ってはいました。しかし私は過去(2018年ごろ)の治療でステロイドの副作用でうつ状態になり、それがとても苦しかったので、もうステロイドは使いたくないと思っていました。また、ステロイドは緩解導入(症状の改善)には使えますが、緩解維持(状態の維持)には使えません。このときの私には、ほかに緩解維持に使える薬がありませんでした。だから、たとえステロイドで一時的によくなっても減量したらまた悪化することが目に見えていたため、この選択肢①は現実的ではないと除外しました。 

血球成分除去療法では比較的太い針を血管に挿入します。私は若いころから血管が細いとよく言われますが、過去にこの治療を受けたときは20代で、なんとか針は入りました。が、血圧が足りずにゴムボールを握り続けるなど、大変でした。若い時分でそんな風でしたので、40代の自分では(歳を取ってより血管が細くなったように感じていたので)難しいのでは?と思い、主治医に血管を見てもらった結果、主治医も無理そうだと判断しました。 

こうして、選択肢のうち①と②がなくなり、私は③を選ばざるを得ませんでした。決断まで時間はかかりませんでした。 

治療のプロセス・結果 腹腔鏡補助下大腸全摘術および人工肛門造設術

治療の時期:2021年8月

治療前の準備

私は消化器内科に入院中に、内科治療から外科治療に切り替える決断をしました。そのため、まず外科手術をどこで受けるかについて主治医と相談をしました。主治医は、近隣で一番実績豊富な病院を勧めてくれました。主治医は転院するならすぐに紹介状を書いてくれるといいましたが、その病院は新型コロナ患者を大量に受け入れていた病院でしたので、紹介状を持ってしてもすぐ転院できるかどうか、転院できても手術してもらえるかもわからないなと思いました。私は痛みに耐えるだけの状態から脱したかったので、転院してまた待つのは耐えられないと言うと、主治医は他院ではなく当院の消化器外科に相談をしてくれたようで、「〇日後に手術をしてもらえるから、明日の午前までに手術を受けるか決断してほしい」と言われました。私はその日の夜に夫に電話をして手術を決め、次の日の朝、主治医に手術を受ける旨を伝えました。このとき、夫はビデオ通話で主治医から話を聞きました。 

検査は、消化器内科に入院したときに大腸内視鏡検査済みでした。手術を決めたあとは外科病棟に移り、そこで手術に必要な検査(心電図など)や事前説明を受けました。手術当日か前日に新型コロナの検査も受けました。陽性の場合、手術は延期とのことでしたが、陰性でした。 

手術を担当してくれる外科医からは、手術のやり方について説明がありました。私は腹腔鏡も使って開腹手術をするという話でした。麻酔科医からは麻酔についての説明もありました。 

手術前の処置として、一人の看護師が私のお腹のどの位置に人工肛門をつくるかを測りにきて、印を付けていきました。別の看護師は、私のへその中をオリーブオイルできれいにしてくれました。また別の看護師が手術用のルート確保のため、苦労して点滴を入れ直してくれました(もとの点滴の針は普通より細いものを使っていたため)。 

治療中の出来事

TVドラマの手術シーンでは、患者はストレッチャーに乗せられてオペ室に入っていく印象を持っていましたので、自分の手術のときは自分で歩いてオペ室に入ったことが、意外に感じました。手術室に到着すると、医師や看護師の方々が10人ほどズラッとならんでいて、患者である私本人の口から、何の手術をするのかを自己宣告しました。そのような流れもドラマでは見たことがなかったので、驚きました。 

私は過去、帝王切開で出産した経験がありますが、産婦人科ではそんなに大勢に囲まれはしませんでした。そのときは家族の見送りがあり、家族が手術の終わるのを病院で待っていてくれましたが、潰瘍性大腸炎の手術のときはコロナ禍だったので、家族の見送りも待機もなく、独りぼっちで手術に臨まなくてはいけない、なんとも言い表せない状況でした。 

手術室に入ると、自分でストレッチャーに座って横になり、背中に麻酔の注射を受けました。手術では肛門からの処置もあるため、特殊な手術台も使うと説明されました。その手術台では脚を広げる状態になるようで、麻酔で意識がない状態なら恥ずかしさもないので良かったと思いました。 

手術中のことは、麻酔のせいでまったく覚えていません。気が付いたときにはすでに手術は終わっており、私は病室のベッドに寝かされていました。 

治療等の感想

開腹手術は帝王切開で経験済みで慣れていると思っていましたが、実際は想像していたよりもずっと痛かったです。病室に戻った後、自分で麻酔を追加することも出来たのですが、それを使っても痛いままで、看護師に「本当に麻酔入っているのかな」と何度も聞いてしまうぐらい、本当に痛かったです。 

また、肛門に管が入っていて、それも痛くて仕様がありませんでした。まさかおしりに管が入った状態で一般病室に戻ってくるなんて思ってもいなかったので(私が外科医の事前説明で聞き逃したのかどうかは不明です)、少しパニックになりました。 

人工肛門からは本来肛門から出るはずのものが水のようにジャバジャバ出てくるので、人工肛門周囲の皮膚がヒリヒリと痛み、これもとてもつらかったです。手術前の潰瘍性大腸炎の痛みは少し穏やかになるときもありましたが、人工肛門周辺の皮膚のヒリヒリした痛みは一向に引く気配がなく、このときばかりは人工肛門造設術を受けたことを後悔しました。その後、皮膚の治療を受けたのでこの痛みはやや落ち着きました。 

治療等の経過

手術後は、人工肛門のパウチを自分で交換出来るようになったら退院出来ると言われていました。もちろん、点滴も外れていることが前提にはなります。しかし、私は入院中に点滴を外したあと脱水になり、再び点滴をはじめたこともあって、退院までの日数は想定よりも長くなりました。 

私にとってパウチ交換を覚えることはそれほど難しくありませんでした。しかしよく漏れました。パウチは3日に1回交換することを推奨されていましたが、交換した日に漏れて付け直すこともしばしば起きました。それは、看護師がパウチ交換をしてくれたときも同じでした。人工肛門用パウチはいくつか種類があり、それぞれ試してみたのですが、どれもうまくフィットしませんでした。最終的には、お腹にベルトを巻く形のパウチを使って物理的にパウチ外れ(漏れ)を防ぐことで、やや漏れにくくなり、ようやく退院のめどが立ちました。 

はじめは術後2週間程度で退院できる予定でしたが、私は手術から退院まで1か月以上かかりました。ところが、私は退院から2週間経たないうちに脱水で緊急搬送され、再入院しました。その後、人工肛門閉鎖術を受け退院するも、下血による貧血でまた入院。自宅で安定した療養生活を送れるようになるまでには半年の月日を要しました。 

感想と伝えたいこと

感想

潰瘍性大腸炎の症状は、同じ病名の人であっても人それぞれ違います。薬の効き方も人それぞれちがうようです。だから、誰かがうまくいった治療が自分にもうまくいくとは限りません。私は長く病気と付き合ってきたため、それを十分知っているつもりでした。それでも、手術後の私の状態に医師すら戸惑っている様子を受け、とても悲しい気持ちになりました。あまりに術後がつらかったため、もう手術は懲り懲りだと思いました。 

手術するまでの生活は、とても気ままなものでした。原因不明の病気ですが、治療薬はたくさんあります。だから、再燃しても薬を追加してもらえばすぐ良くなる、という甘えがあったかもしれません(実際それで乗り切ってきたので)。 

でも、手術をしたあとはそうした甘い考えはなくなりました。もう入院も手術もしたくないので、いま残っている小腸と肛門を大事にしたいと思って生活しています。これ以上悪化させて、また手術をしたり、永久人工肛門になったりするのは絶対に避けたいので。 

手術前の私は、仕事をバリバリこなす自分のことが好きだったと思います。ですがいまは家族と家で生活できているだけで十分だなと思うようになりました。 

伝えたいこと

いまだ潰瘍性大腸炎の治療に終わりはみえません。手術も完治ではありません。そのため潰瘍性大腸炎の場合は病気と闘うのではなく、病気と上手に付き合っていくことが求められています。だから、少しでも安心して病気と付き合っていくために、自分の不安や疑問を口にできる医師、適切なアドバイスをくれる専門医など、信頼できる主治医に出会うことも大切だと思います。 

大腸摘出後の生活では、大腸のない身体に慣れることが必要です。私は慣れるまでに年単位の時間が必要でした。だからこれから手術を予定している人には、「焦らず気長にのんびりと」をモットーに、ゆっくり療養して身体を労わってあげてほしいです。 

ここで紹介した治療体験内容のほかにも、病気を通じた体験や術後の体調についてブログで紹介しています。興味のある方は下記URLからご覧になってください。 
Leoさんのブログ:潰瘍性大腸炎さんがなかなか別れてくれない



関連する体験談

  1. 【注釈】潰瘍性大腸炎とは、原因不明で大腸の全体に生じた炎症です。30歳以下の成人に多いのですが、小児や50歳以上の人にもみられます。典型的な症状は、血が混じった下痢です。病気は長年にわたって続き、時に悪性化(癌になる)します。指定難病です。 ↩︎
  2. 【注釈】赤い下痢が起きる病気には以下のものがあります。赤痢《文字通り、赤い下痢です。1992年の全国の届け出数は約800件でした》、赤色食品《赤いキャンディーのように赤色の食品着色料を含む食品とか赤色の自然食品》、《胃腸の出血》、《痔》、《薬》そして《潰瘍性大腸炎、過敏性腸症候群》などです。 ↩︎
  3. 【注釈】発酵性・オリゴ糖・二糖類・単糖類・糖アルコールの頭文字をとってFODMAPというのですが、これらを多く含む食品は過敏性大腸炎を引き起こすといわれています。缶ジュースには沢山入っていますね。香辛料や脂質の多いもの、カフェインは症状を悪化させます。小麦、玉ねぎ、レンズ豆、牛乳、りんご、とうもろこし、ヨーグルト、はちみつなどもできるだけ避けたい食品になります。 ↩︎
  4. 【注釈】おもな症状は血便、粘血便、下痢、血が混じった下痢など病気の範囲と重症度により様々です。腹痛、発熱、体重減少、貧血なども出現します。 ↩︎
  5. 【注釈】難病とは、発病の原因が明確でないために治療方法が確立しておらず、長期の療養を必要とする病気です。そして、指定難病とは沢山ある難病のうち、患者数が人口の0.1%程度に達しないこと、そして客観的な診断基準が確立していることと定められています。 ↩︎
  6. 【注釈】 軽症では日に数回の血便程度ですが、重症の中でも特に症状が激しくなる劇症になると大変です。劇症の状態では、15回/日以上の血性下痢が続く、38.5℃以上の高熱が持続する、10,000/mm3以上の白血球増多がある、強い腹痛があるなど酷い苦痛を伴います。 ↩︎
  7. 【注釈】難病に位置付けられているということは、治療法は確立していないということでもあります。主症状が下痢と下血ですから、対症療法として、水分と電解質の補充と貧血に対する治療が主となります。薬としては、軽症及び中等症例では免疫調整薬と呼ばれる薬、副腎皮質ホルモン薬、が使われます。薬が効かない場合には、患部である大腸そのものを切り取ることも選択肢になります。 ↩︎

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