
ゆうさんのジャーニー
ゆうさんのプロフィール
患者との関係性 本人
病気発症時のご年齢 10代1
性別 女性
居住地区 愛知県
病名 脳動静脈奇形2
診療科 脳神経外科
治療箇所/部位 脳(右前頭葉)
- 2016年1月
- 初期症状
- 診察のきっかけ
- 病気判明
- 2016年1月
- 選択肢
- 方針決定
- 2016年1月
- 治療前の準備
- 治療中の出来事
- 治療の感想
- 治療後の経過
- 2016年2月
〜9月- 治療前の準備
- 治療中の出来事
- 治療の感想
- 治療後の経過
- 2024年6月
- 感想
- 伝えたいこと
ゆうさんの体験談
病気の診断
初期症状が現れた時期:2016年1月 病気判明の時期:2016年1月
初期症状
中学 2 年生の頃から立ちくらみとめまいが続き、貧血だと思い市販の鉄分サプリを飲んでいましたが改善しませんでした。発症 1 週間前には刺身や甘い缶のおしるこが「苦い」と感じる味覚の異常も出ていました。
診察のきっかけ
自宅ガレージで自転車を点検中に急に声が出なくなり3、そのまま左側へ倒れ4意識を失いました。近隣の方が救急車を呼んでくださり救急搬送されました。
検査
救急病院で頭の画像検査5(CT と MRI)を受けたところ、右前頭葉に出血があり、原因は直径 1.5㎝ほどの脳動静脈奇形(異常な血管のかたまり)6だとわかりました。出血量はその時点で60cc(7cm×3.8cm)あり、多量と言われる量でした。「若いうちに再び出血する可能性が高い」と家族が説明を受け、すぐに緊急手術7を行うことが決まりました。
病気判明
ぼんやりとした意識の中で「このままでは命に関わる」と聞き、恐怖と家族への申し訳なさで胸がいっぱいになりました。それでも治療方法があるとわかり、医療チームにお願いするしかないと覚悟しました。
治療方針の検討
検討時期:2016年1月
選択肢
① 開頭手術で脳動静脈奇形を直接取り除く(根治を目指す方法)
② ガンマナイフ8という放射線で少しずつ血管を閉じる(時間はかかるが体への負担は軽い)
③出血を止める処置9だけをして経過観察(再出血の危険が大きいため推奨されず)
方針決定
年齢が若く手術で取り切れる可能性が高いと説明を受け、一刻を争う事態だったのと私は意識がなかったので家族と医師が話し合いの上、即日開頭手術を選択しました。10
治療のプロセス・結果①:開頭摘出手術
治療の時期:2016年1月
治療前の準備
全身麻酔の前に頭髪を一部剃り(前髪の真ん中〜右耳の後ろ)、位置を確認するためのマーカーを付けました。万一に備えて輸血用の血液も用意されました。
治療中の出来事
手術は約6時間半かかり、異常な血管のかたまりを一塊で取り除き、出血を抑える処置をして終了しました。その後は集中治療室で全身の管理をされました。術後は意識がない中でも強烈な頭痛があったことはとても記憶に残っています。
治療等の感想
意識がはっきりしてきたのは術後約10 日後で、左半身が動かず言葉も不自由でしたが、私の記憶は自転車の点検をしていたところから途絶えていたので何が起こったのか理解ができずリハビリすれば元に戻ると客観的に捉えていました。術後鏡を初めて見た時は顔がパンパンに腫れ顔面麻痺で顔がぐちゃぐちゃなのがとてもショックでした。鏡を見て「誰…?」と思うほどまるで別人の顔がそこには映っていました。
治療等の経過
術後 5 日で一般病棟の個室、4人部屋と段階的に部屋を移り、脳に刺激を与えていました。食事も鼻から胃に管を入れて直接流動食を入れる経鼻管栄養から少しずつ口から食べられるようにリハビリを行いました。1 か月後にリハビリ専門病院へ転院しました。
治療のプロセス・結果②:集中的リハビリテーション
治療の時期:2017年2月〜7月
治療前の準備
重度左半身麻痺が残ったのでリハビリテーション病院に入院し理学療法・作業療法・言語療法を週 6 日、合計 3 時間以上行う計画を立て、リハビリ中心の毎日でした。家や学校のバリアフリー調整も行いました。
治療中の出来事
最初は1人で座ることも出来ず座位を保つ練習から始め、足の付け根から足を固定する長下肢装具を付けて歩行練習を進めました。左手には電気刺激を当てながら片手だけを使う訓練を行いました。思うように動かない手足と向き合い、完全には治らないと知りとても悲しかったけど家族に心配をかけないように笑顔でいることを心掛けていました。通学環境を調べる外出中にてんかん発作を起こし、救急搬送され抗てんかん薬を開始しました。
治療等の感想
同じ年代の入院仲間が居らず孤独を感じた半年間の入院生活でしたが、スタッフの皆さんが少しでも回復するように力を貸してくれたり音楽療法や友人の面会が励みになりました。今まで当たり前に出来ていたことが出来ずに悔しい思いが沢山ありましたが、車いすではなく自分の足で歩き、歩行距離が伸ばせたり出来ることが増えると希望が湧くと共に、当たり前のことなんてないと痛感しました。
治療等の経過
退院時には生活動作の自立度を示す評価が 112 点となり、足首装具と片手杖で 100 m 歩けるようになりました。日常会話も問題なくできるようになりましたが、左手は全廃(日常生活で使うことが出来ない)となってしまいました。
感想と伝えたいこと
感想
退院後は通信制高校へ転籍し学業を継続しました。現在は病気の経験を通し人の役に立ちたいという思いから医療関係の職場で働いています。てんかんも服薬にて落ち着いているので医師の許可を得てハンドルに補助具を付けた車を運転するなど自立した生活を送っております。病気を通じて人の優しさと社会の課題に気づき、ブログや SNS で経験を発信することで少しでも誰かの希望になりたいと思っています。
伝えたいこと
脳動静脈奇形は若い方でも突然出血しますが、早期治療と根気強いリハビリで生活は立て直せます。過去や他人と比べず「今日できたこと」を認め、助けを申し出てくださる方には感謝を伝えて支援の輪を広げていただければ幸いです。
関連する体験談
脊髄小脳変性症の体験談【tomoさん】
tomoさんは立ちくらみや足取りのふらつきが増えましたが、自身では疲労仕事や育児の疲れと思っていました…
全身性エリテマトーデスの体験談【とんチャリさん】
階段昇降で動悸・息切れが続き、夜間は右側臥位でないと呼吸が苦しい状態、同時に複数関節が腫れ、朝はペットボトルの蓋を開けることすら困難で…
視神経骨髄炎の体験談【とんチャリさん】
視界がかすむ感覚が続き、週末に眼科を受診しようと計画しておりましたが、受診前日に突然両眼ともほぼ失明状態となりました…
- 【注釈】好発年齢は20歳~40歳。男女比は2:1です。 ↩︎
- 【注釈】心臓から出た血液は、動脈を通って全身に運ばれ、毛細血管の中で仕事をしたのち、静脈を通って心臓に帰ります。これが正統な通り道なのですが、動脈の途中から迷路に入り静脈に抜けてしまう、間違ったルートが出来てしまうことがあります。脳血管が形成される妊娠初期の胎児の異常により、毛細血管が作られずに動脈と静脈が直接つながってしまった先天性の病気です。遺伝する病気ではありません。
この血管で出来た迷路は、(血管)壁がとても弱いのです。そのような迷路が頭に中にあると、大層危険です。壁が破れると脳出血やくも膜下出血を起こし、頭痛、吐き気、嘔吐、半身麻痺、言語障害、視野障害などが現れます。 ↩︎ - 【注釈】声が出ないと表現されていますが、言葉が出なかった(失語症)と推測します。 ↩︎
- 【注釈】左の半身まひが生じたと思われます。 ↩︎
- 【注釈】診断は画像で確定します。この方の場合は血管の破堤が出てしまいましましたが、出血前の症例では、脳血管造影検査、脳波検査などの検査も必須となります。 ↩︎
- 【注釈】一般的な説明ではありますが、脳動静脈奇形はそれだけでは症状を起こさない、あるいは頭痛程度です。毛細血管を通過しない血液は、脳との間で酸素や栄養、老廃物や二酸化炭素の交換ができないため、脳が正常に働けなくなります。脳動静脈奇形の発生場所や大きさによっては、てんかん発作や認知症状で見つかることがあります。20%~40%がけいれん発作で発症します。40%~80%は脳動静脈奇形が破裂して、くも膜下出血あるいは脳出血の症状を起こします。
個人差はありますが年齢とともに次第に大きくなる傾向があります。一方、小さい脳動静脈奇形の方が出血しやすいともいわれています。 ↩︎ - 【注釈】的確な判断です。 ↩︎
- 【注釈】ガンマナイフやリニアックは放射線治療の一つです。ガンマナイフとは特殊な放射線治療です。非常に狭い範囲に、高い線量の放射線を集中的にあてることで、正常脳組織に及ぼす悪影響を最小限に抑え、病気を小さくする治療法です。
3cm以下の小さな脳動静脈奇形には、ガンマナイフがよくききます。とはいえ、ガンマナイフ照射後、直ちに病変が消えてしまうわけではありません。平均して病変が消失するまでに2~3年かかると考えられています。また平均消失率は、照射後2年で70%、3年で86%です。脳動静脈奇形が消失するのを待っている間は、出血リスクは軽くなりますが可能性は残っています。1.4 %程度ですが、合併症として、放射線による脳障害が生じる可能性があります。 ↩︎ - 【注釈】血管内治療は、太ももの血管(動脈)から細いカテーテルを頭まで上げていって、液体の塞栓物質やコイルを用いて、脳動静脈奇形を閉塞させる手技です。閉塞により、脳動静脈奇形を小さくすることで、手術が安全に行えたり、放射線治療で治る大きさ(3cm以下)にすることが可能です。血管内治療だけでは脳動静脈奇形を完全に治すことはできませんので、手術と放射線治療を補助する治療として使われています。
合併症として、脳内出血、脳の腫脹、血管閉塞による脳梗塞、手術中の脳・脳神経の損傷、感染症、痙攣の問題などがあります。 ↩︎ - 【注釈】的確な判断です。②や➂を選択した場合でも、頭の中に60ccの血腫が出来ていますので、開頭はしなくても、頭蓋骨に穴を開けて血を抜く手術は必要でした。 ↩︎
コメント