
とんチャリさんのジャーニー
とんチャリさんのプロフィール
患者との関係性 本人
病気発症時のご年齢 30代
性別 女性1
居住地区 鹿児島県
病名 視神経骨髄炎2
診療科 神経内科
治療箇所/部位 視神経・脊髄
- 2000年9月〜
2019年2月- 初期症状
- 診察のきっかけ
- 病気判明
- 2000年9月~
現在- 選択肢
- 方針決定
- 2000年9月~
2018月- 治療前の準備
- 治療中の出来事
- 治療の感想
- 治療後の経過
- 2019年2月~
2019月3月- 治療前の準備
- 治療中の出来事
- 治療の感想
- 治療後の経過
- 2024年7月
- 感想
- 伝えたいこと
とんチャリさんの体験談
病気の診断
初期症状が現れた時期:2000年9月 病気判明の時期:2019年2月
初期症状
2000 年夏、視界がかすむ感覚が続き、週末に眼科を受診しようと計画しておりましたが、受診前日に突然両眼ともほぼ失明状態となりました。当日は夫の付き添いで眼科を受診し、精査目的で大学病院を紹介されました。
診察のきっかけ
急激に視力を失ったため緊急で眼科を受診し、紹介状を持って神経内科のある大学病院を翌診療日に受診いたしました。視力が戻らない状況を憂慮し、その日のうちに入院となりました。◆3
検査
入院後ただちに血液検査、頭部・頸髄 MRI、髄液検査などの精査4を実施いたしましたが、当初は多発性硬化症や膠原病など複数疾患の鑑別が行われ5、確定には至りませんでした。高用量ステロイドパルス療法6を実施したものの、退院時点でも視力はわずかに形が判別できる程度で、病名は「視神経炎疑い」のままでございました。その後 20 年近く再発寛解を繰り返し、再燃時ごとにステロイドパルスを入院または外来 3 日間コースで施行いたしました。
病気判明
2019 年 2 月、歩行障害を伴う重い再発で(追記)初発から20年経過したところで、目以外に症状が出はじめました。大学病院へ転院し、血液浄化療法7開始前にアクアポリン 4 抗体検査8結果が陽性となり、視神経脊髄炎と正式に診断されました。長年診断がつかなかったため、病名が確定した安堵感と同時に、進行性疾患であるという現実への不安を抱きましたが、治療選択肢が明確になったことで前向きに治療へ臨む決意を固めました。
治療方針の検討
検討時期:2000年9月・2019年2月
選択肢
●2000 年以降の再発時:副腎皮質ステロイド 1,000 mg/日×3 日のステロイドパルス療法を第一選択とし、必要に応じて経口プレドニゾロン漸減。
●2019 年再発時:ステロイド抵抗性であったため、血漿交換療法9(プラズマフェレーシス、計 7 セッション)を提案され、併せて免疫抑制薬10アザチオプリン併用が提示されました。
方針決定
ステロイド以外の治療は未経験でございましたが、主治医より血漿交換療法による早期改善が期待できる旨を詳細に説明いただき、夫とも協議のうえ同療法を受諾いたしました。小児を育児中でございましたため、入院期間や在宅介護体制を家族で調整し、治療開始に臨みました。
治療のプロセス・結果①:高用量ステロイドパルス療法
治療の時期:2000年9月〜2018年
治療前の準備
入院当日に血液・尿検査、感染症スクリーニングを実施し、翌日から 3 日連続でパルス投与を行いました。副作用対策として胃粘膜保護薬、血糖モニタリング、深部静脈血栓予防の弾性ストッキング11を併用いたしました。
治療中の出来事
ステロイド投与中は強い多幸感・不眠・発汗が生じ、夜間睡眠が困難となりましたが、看護師の方が定期的に巡回し、環境調整や睡眠薬の投与で対応してくださいました。
治療等の感想
急性期症状の改善を期待しておりましたが、視力に関しては劇的な回復は得られず、不安を抱えたまま退院いたしました。ただし再発のたびに一定の効果を認めたため、当面の標準治療として受け入れてまいりました。
治療等の経過
外来パルス療法が保険適用となってからは、3 日間通院で投与を受けられるようになり、育児負担と入院恐怖感が大幅に軽減いたしました。
治療のプロセス・結果②:
治療の時期:2019年2月〜2019年3月
治療前の準備
治療開始 30 分前に局所麻酔パッチを貼付し、透析用ダブルルーメンカテーテルを右大腿静脈に留置。処置前に凝固系・電解質を測定し、治療計画(隔日全 7 回)を策定いたしました。
治療中の出来事
治療 1 回あたり 3 時間で 1.0 体積分の血漿を置換。穿刺時の痛みは局所麻酔でほとんど感じず、処置中はリクライニングベッドで安静を保ち、読書や軽い睡眠で過ごしました。
治療等の感想
想定していたより身体的負担が少なく、治療 3 回目頃から足趾の随意運動が回復し始め、希望が湧きました。副作用として一過性の低血圧と寒気がありましたが、看護師の迅速な対応で大事には至りませんでした。
治療等の経過
最終セッション終了時には膝関節の屈伸が可能となり、理学療法士の指導下で離床訓練を開始いたしました。退院時には室内で車椅子からトイレ移乗が自立し、その後外来リハビリと免疫抑制薬内服を継続。現在は室内歩行は杖なし、屋外は一本杖で移動可能となっております。◆12
感想と伝えたいこと
感想
20 年近い闘病の中で、失明・再発・寝たきりを経験し、自身の無力さに打ちひしがれた時期もございました。しかし血漿交換療法とリハビリにより「できること」を一つずつ取り戻す過程で、視点が床面から車椅子、さらに立位へと上がっていく喜びを何度も味わいました。家族、とりわけ幼い子を抱えながら介護に奔走した夫の支援には感謝してもし尽くせません。
伝えたいこと
視神経脊髄炎は再発性であり将来への不安は尽きませんが、適切な治療とリハビリにより機能回復が期待できます。「できない自分」を責めるのではなく、現在地を基点に小さな達成を積み重ねてください。治療法は進歩しており、専門医・家族・仲間と連携して一歩ずつ前進なさることを心よりお勧め申し上げます。
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- 【注釈】30歳から50歳代に多く、男女比は1:9です。とくに30-35歳の女性に多いのが特徴です。親から子に病気が遺伝することはありません。ただ、アレルギー体質が遺伝するように、この病気になりやすさに関わる体質遺伝子が遺伝することはありえます。 ↩︎
- 【注釈】大脳からの命令で手足は動きます。その命令を伝えるのは神経です。神経の構造は電話線に似ています。電話線は裸のままではなくビニールで覆われていますね。神経も同じでして、髄鞘と呼ばれる絶縁体で覆われています。ビニール(髄鞘)が壊れて中の電線(神経)がむき出しになると、うまく通信できません。通信障害(神経症状)です。神経系のこのような状態を「脱髄」といいます。
脱髄した箇所は、すぐに修復されないと、硬くなってしまうのだと考えてください。そのような硬くなってしまった状態が、全身のあちこちに何度も繰り返して起きた状態を「多発性硬化症」と呼びます。そして視神経のみに生じたものは「視神経脊髄炎」と呼ばれます。ただし、「視神経」の名前はついていますが、症状は目にとどまらず、視覚障害以外に、感覚障害(感覚が鈍くなる、しびれ)、運動機能障害(麻痺や動きにくくなる)、その他(しゃっくり、吐き気、意識障害、失語症、小脳失調)などが出ることがあります。 ↩︎ - 【注釈】脱髄が視神経に生じた病気ですから、視力が低下したり、視野が欠けたりします。この症状が出る前や出ている最中に目を動かすと目の奥に痛みを感じることがあります。 ↩︎
- 【注釈】視覚検査、眼底検査、MRI検査は必須です。髄液検査で炎症があることを確認します。脱髄が起こると、神経を通した命令の伝達に遅れが生じます。この遅れの状態をとらえる検査法のひとつに視覚誘発電位と呼ばれる検査があります。 ↩︎
- 【注釈】多発性硬化症に似ていますが、それよりも発病年齢が高く、比較的高齢の方にも発病することがあります。また、女性の割合が非常に高いのが特徴です。 ↩︎
- 【注釈】ステロイドパルス療法は大量のステロイド薬(500~1000mg)を1回2~3時間で3日間、点滴する方法です。 ↩︎
- 【注釈】血液から不要、あるいは有毒な物質を除去する治療方法で、透析・ろ過・吸着・分離などの方法があります。最も広く行われている血液浄化療法は慢性腎不全患者さんに対する血液透析療法です。 ↩︎
- 【注釈】自己抗体の一つで、この病気では高率に認められます。 ↩︎
- 【注釈】患者から血液を取り出し、その血液から血漿成分を分離し、病因物質を除去することを目的とした治療法です。この治療法は、自己免疫疾患の急性増悪時に、免疫抑制薬の効果が発揮されるまでの期間を短縮するために用いられることが多いです。 ↩︎
- 【注釈】免疫とは、私たちの体をウイルスなどの外敵から守る防衛軍です。しかし、その防衛軍が突然私たち自身を襲ってくることがあるのです。そのような異常事態に陥った状態が、関節リウマチ、重症筋無力症、全身性エリテマトーデスなどの「自己免疫疾患」と呼ばれる病気です。襲われっぱなしでは、体が壊れてしまいますから、免疫を押さえる必要があります。免疫を抑制する薬剤が必要になります。 ↩︎
- 【注釈】ステロイドの副作用の一つに、深部静脈血栓症のリスクが3 倍に上昇することが知られています。 ↩︎
- 【注釈】再発では視力障害が重篤 になることが多いため、生涯にわたって再発予防の治療を行う必要があります。再発予防には、経口ステロイドや免疫抑制薬が用いられるほか、モノクローナル抗体製剤と呼ばれる医薬品が使われます。
過労やストレス、感染などは再発の危険因子です。ウートフ現象(お風呂に入るとか暖かいもの食べるなどで、体温が上昇すると、麻痺や痺れなどの神経症状が悪化する)が短時間(24時間以内)に出ることがあります。そのような場合には高い温度の風呂、サウナ風呂、運動、室温や気温上昇、湿度上昇などの環境は避けましょう。この症状を見つけた眼科医ウートフUhthoffの名前が付けられた現象です。 ↩︎
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