全身性エリテマトーデスの体験談【とんチャリさん】

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  • 体験談は医師によるチェックを行っており、明らかな間違いや誤解を招くような表現はないようにしていますが、なるべく発信者の生の声をお届けするために訂正は最小限にとどめています。

とんチャリさんのジャーニー

とんチャリさんのプロフィール
患者との関係性   本人
病気発症時のご年齢 40代
性別        女性1
居住地区      鹿児島県

病名        全身性エリテマトーデス2
診療科       神経内科(初診時は呼吸器内科)
治療箇所/部位   胸膜(胸水貯留)、全身関節

とんチャリさんのジャーニー

とんチャリさんの体験談

病気の診断

初期症状が現れた時期:2008年秋頃  病気判明の時期:2009年5月

初期症状

2008 年後半から階段昇降で動悸・息切れが続き、夜間は右側臥位でないと呼吸が苦しい状態3でした。同時に手指・手首・肘など複数関節が腫れ、朝はペットボトルの蓋を開けることすら困難でした。4

診察のきっかけ

息苦しさが悪化し、就寝時に平臥できなくなったため呼吸器内科を受診。胸部レントゲンで右側胸水が確認され、そのまま胸腔穿刺を受けました。5

検査

胸水 1.5 L を排液後、胸水と血液の自己抗体検査を実施。抗核抗体高値と低補体血症が判明し、院内神経内科へ紹介されました。追加で抗 ds-DNA 抗体6が陽性となり、2009 年 5 月に全身性エリテマトーデスと確定診断を受けました。

病気判明

視神経脊髄炎に続く2つ目の自己免疫疾患と知り動揺いたしましたが、胸水が抜けた直後に呼吸が改善した経験から「治療で改善できる」と前向きに受け止めました。

治療方針の検討

検討時期:2009年5月

選択肢

① 胸腔穿刺による胸水排液

② ステロイドパルス+経口プレドニゾロン維持

③ 抗マラリア薬(ヒドロキシクロロキン)併用

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方針決定

まず胸水排液で呼吸を安定させ、ステロイドで炎症を抑制いたしました。副作用軽減と再燃予防のため抗マラリア薬8を併用する方針で家族と合意しております。

治療のプロセス・結果①:胸水穿刺(胸水を抜く処置)

治療の時期:2009年5月

治療前の準備

エコーで穿刺部位を確認し、局所麻酔を施行いたしました。

治療中の出来事

右胸から約 1.5 L の胸水をゆっくり排液していただき、直後に胸部圧迫感が消失。「平らに寝ても苦しくない」と感じ、大きく息を吸えることに感激いたしました。

治療等の感想

穿刺痛は想像より軽く、呼吸が劇的に楽になったことで大きな安心感を得ました。

治療等の経過

その後のレントゲン検査でも再貯留はなく、数日でドレーンを抜去していただきました。

治療のプロセス・結果②:ステロイドパルス療法と経口ステロイド維持

治療の時期:2009年5月〜現在

治療前の準備

感染症スクリーニングと胃粘膜保護薬を併用いたしました。

治療中の出来事

3 日間の点滴後、手指の関節痛が半分ほどに軽減いたしました。一方で多汗と不眠が生じ、看護師に相談し頓用の睡眠導入剤を使用しております。

治療等の感想

副作用はあるものの関節の動きが改善し、日常動作が楽になったことを実感しております。

治療等の経過

退院時副腎皮質ホルモン剤 20 mg/日で維持を開始し、外来で漸減中です。関節腫脹緩和を目的に抗マラリア薬を併用しております。

感想と伝えたいこと

感想

胸水排液直後に呼吸が劇的に改善した経験から、適切な治療への信頼が芽生えました。ステロイド副作用(多汗・不眠)はあるものの、関節痛軽減という効果とのバランスを取りながら治療を続けております。

伝えたいこと

長引く息苦しさや関節痛は自己判断せず、早めに専門医へご相談ください。胸水は穿刺排液で速やかに改善する場合がありますし、定期的に補体価・自己抗体を確認することで再燃兆候を早期に把握できます。体調メモを残し、主治医と情報共有しながら治療を続けていただければ幸いです。



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  1. 【注釈】妊娠可能な年齢の女性に発症しやすい病気と考えられています。また、発症する人の男女比は1:9であり、圧倒的に女性が多い病気です ↩︎
  2. 【注釈】全身の様々な場所、臓器に、多彩な症状を引き起こす病気です。難病に指定されています。 ↩︎
  3. 【注釈】この後、胸部レントゲン検査で右肺に胸水(肺の中に水が溜まっている状態)が確認されています。胸水がある側を上にすると、健康な左の肺が押されて息苦しかったのです。 ↩︎
  4. 【注釈】初期症状として頻度の高いものには、発熱、関節の痛みや腫れ、皮疹、倦怠感、尿の異常、息切れなどがあります。 ↩︎
  5. 【注釈】この方の胸水は全身性エリテマトーデスのよる胸膜炎から生じたものです。しばしば、両側性ですが、この方では右のみでした。 ↩︎
  6. 【注釈】抗核抗体の一つ。膠原病で陽性となることが多く、特に全身性エリテマトーデス において、その特異度は97%と、高い診断力を持ちます。またエリテマトーデスの病勢を反映して増減します。 ↩︎
  7. 【注釈】ステロイドと免疫抑制薬です。標準的な治療は薬物療法です。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は痛みや炎症を軽減するために使用されます。ステロイド剤が使用され、炎症を抑えます。免疫抑制薬は免疫系の過剰反応を抑えます。免疫調整薬として抗マラリア薬も使われます。 ↩︎
  8. 【注釈】抗マラリヤ薬がどのような機序で自己免疫疾患に有効化は未だ解明されていませんが、免疫系の活性化をもたらす免疫細胞同士の連絡を阻害していると考えられています。 ↩︎

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